2021 年 5 巻 1 号 p. 1
2020年6月,一般社団法人全国保健師教育機関協議会(以下,全保教)は,設立40周年記念事業を予定していました.しかしながら,新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況を鑑み,2021年6月に延期開催することを決定しました.長い歴史を創り上げてきた会員校の皆様に敬意を表するとともに,過去の経験が現在を支え,未来を切り拓く力となることを強く実感する1年となりました.
特に「感染症法改正に関する声明」(全保教公式ホームページ,2021,1)は,過去の教訓を生かしての意向であり,今後の公衆衛生看護活動を護り,その役割を担う保健師の育成を推進する団体としての要請となりました.その後,「感染症法」の一部改正,施行となり(厚生労働省,2021),感染者の入院拒否,積極的疫学調査の拒否および虚偽の回答に対し「過料」の対象とすることが明記されました.これにより,感染者への個別対応を通して,信頼関係を築きながら不安の軽減や適切な支援を進めてきた保健師の活動にどのような影響があるのか懸念されるところです.
新型コロナウイルス感染症は,2019年12月に最初の症例が確認され(粟野,2020),その後世界に拡大し,2021年2月現在,日本の11都府県に2度目の緊急事態宣言が発出されました.この状況に対応する保健所の業務量は想像を超えるものであり,現場の保健師は,休日返上の対応を余儀なくされています.保健師のマンパワー不足に対しては,全保教も協力を進め,緊急報告会「新型コロナウイルス感染症への保健所の対応の実際と課題」を開催し,今後の支援活動につなげる機会を設けました.改めて保健師活動の重要性を実感し,教育の質向上への更なる動機づけとなりました.
保健師教育は,保健師助産師看護師学校養成所指定規則の一部を改正する省令(文部科学省・厚生労働省令,2020)により,カリキュラムの総単位数を「31 単位」とすることが規定されました.全保教では,保健師教育の充実,質向上を図るべく大学院化推進の一助となる「大学院カリキュラムモデル(全保教版 2020)」を作成しました.カリキュラム編成にどのように活用していただけるのか,今後どのような課題が見えてくるのか,会員校の皆様とともに検討していきたいと考えております.そして,2020年度は,対面からオンラインに切り替えて,講義,演習,実習を進めるという新たな挑戦を求められました.このような状況にも屈することなく様々な授業展開方法が,掲示板に寄せられました.困難な中でも打開策を見いだし,未来を創造できるのが保健師であり,保健師教育であり,全保教の活動であることを念頭におき,会員校の皆様とともに前進していきたいと思います.