2022 年 6 巻 1 号 p. 1
パンデミックは,図らずも,広く国民に保健師が認知される機会をもたらし,かつてないほどに保健師のプレゼンスが高まっています.このような時代に,我々は保健師教育に携わっています.
2019年12月に新型コロナウイルス感染症の初発例が確認されて以降,2020年3月に世界保健機構(WHO)のパンデミック宣言,国内での度重なる緊急事態宣言・まん延防止等重点措置と,2年以上にわたり保健師は感染症の脅威から人々の健康・生命・生活をまもり続けています.保健師教育では,大きな制約がある中でも教育の質を落とさないよう,対面とオンラインの併用,不足する演習・実習体験を補うためのシミュレーションやプログラムなど,会員校がそれぞれに創意工夫を重ねてきました.この機関紙「保健師教育」第6巻に,これまでで最も多くの教育実践に関する論文が投稿されたことは,その表れと言えます.
また,会員校の皆様の多くが,日常業務の傍ら,保健所など現場での応援業務に従事し,教育機関と現場はより一層緊密な関係を築いてまいりました.この歴史的な事態の中,さまざまな制約や限られたリソースにもかかわらず,それぞれの場でその役割を最大限に果たそうと尽力されている全ての保健師の方々に心から敬意を表します.
さて,本協議会は,延期となっていた40周年記念式典をオンデマンドで開催しました.この記念式典は,先人たちが,さまざまな時代背景や社会の変化とともに新たに生じる健康課題に対峙しながら,根気強く積み上げた保健師教育や公衆衛生看護活動への理解と,これからの方向性を考える貴重な機会となりました.折しも,2022年4月より,31単位の新カリキュラムが運用開始となります.保健師教育では,これまでの土台に,パンデミックをはじめとした健康危機管理能力の向上,ニューノーマル(新しい生活様式)に沿った公衆衛生看護活動の再構築と,基礎教育と現任教育がシームレスに接続しながら新たなチャレンジを重ねていくことが求められています.温故知新の精神を基に,パンデミックに向き合ってきた経験を生かし,より質の高い保健師教育にジャンプアップする好機ととらえ,今こそ会員校の皆様の力と叡智を結集し,保健師教育の真価を示せるよう,共に前進してまいりたいと思います.