保健師教育
Online ISSN : 2433-6890
講演記事
地域看護学におけるコミュニティ・ナースの実践―コミュニティ・ナース養成の必要性と可能性―
金井 一薫
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2022 年 6 巻 1 号 p. 2-7

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Abstract

本文は令和3年8月21日に開催された「第36回 全国保健師教育機関協議会」において講演した内容をまとめたものである.

講演では以下の3点について述べた.

1.我が国における“コミュニティ・ナース”養成の必要性と可能性について.―2011年~2012年に行った「文部科学省・科学研究費助成事業・挑戦的萌芽研究」を土台にして―

2.ドイツの“老年看護師”の育成とその実践について.

3.イギリスにおける“地域看護”の発展過程にみるナイチンゲールの施策と実践の姿について.

I. はじめに

地域包括ケアをコミュニティケアと置き換えて考えると,コミュニティケアを実現させるためには,ケア領域における新たな人材が不可欠である.現時点での人材は主に「保健師」と「訪問看護師」であるが,現在とこれからの地域住民の健康問題や生活課題の解決あたっては,両職種だけでは人材が大幅に不足している.保健師は行政職として果たさなければならない領域があり,それは感染症対策や母子保健,精神保健領域に重点がおかれている.また訪問看護師は,依頼があった対象者に限定しての看護活動であるため,この2つの領域の間にあって,健康問題や生活課題を抱えながら暮らす人々の全てのニーズに応える体制にはなっていない.

また,看護師養成カリキュラムにおける「在宅看護論」の内容は,文字通り自宅で療養する利用者の健康問題へのアプローチが主であり,コミュニティ全体の把握とそこに必要な具体的看護実践能力についての学習が不足している.早急に「生活支援型看護モデル」の構築が求められる.

さて,これまで日本では「コミュニティ・ナース」という言葉は使われたことがなかった.「コミュニティ・ナース」は,日本語では「地域看護師」として位置づけられる.しかし,「地域看護師」という言葉からは,具体的な活動が適切にイメージできない.そこで,筆者は「コミュニティ・ナース」設置を提唱し,コミュニティ・ナースを次のように定義する.

「コミュニティ・ナースとは,コミュニティの中で,住民が抱える解決すべき健康問題や生活課題に取り組む職種である.その活動は公衆衛生看護とは区別する.利用者の自宅を訪問して,あるいは住民との相談・交流拠点を設けて,適切な医療・看護ケアや助言を提供し,関連職種や家族・地域住民との連携を図りながら,住民一人ひとりの健康と自立と安寧の実現を手助けする人材である.」

本稿では,以下の3点について述べる.

1.我が国における“コミュニティ・ナース”養成の必要性と可能性について.―2011年~2012年に行った「文部科学省・科学研究費助成事業・挑戦的萌芽研究」を土台にして―

2.ドイツの“老年看護師”の育成とその実践について.

3.イギリスにおける“地域看護”の発展過程にみるナイチンゲールの施策と実践の姿について.

II. 調査研究より

1. 調査研究の目的

地域で実践している看護師に対し,量的調査を行うことにより,看護実践能力について概念化し,かつ概念を構成する具体的な能力における期待の程度を明らかにする.

2. 研究方法

1) 研究デザイン

量的調査研究である.

2) 調査対象

東京都23区,及び全国の政令指定都市19都市にあるすべての地域包括支援センター946事業所,並びにそれらの自治体における訪問看護ステーション1,054事業所の計2,000事業所に所属する看護職を調査対象とした.

3) 調査内容

地域で仕事をする看護師に期待する能力課題と,地域で仕事をする看護師に欠けていると思われる能力課題について,選択式回答項目を提示し,回答を求める他,自由記述欄を設けて意見を求めた.

本調査の質問項目として抽出した「能力項目」は,最新の職務要件書をベースに作成したものであり,今日の地域において不可欠な要素として「58項目」を設定した.各々の項目について,A.現在の能力についての評価,B.今後の期待,を4段階評価で回答してもらった.

3-1. 研究結果(1)

1) アンケートの回収率と研究対象者の属性

調査票692通(回収率34.6%)が回収され,不備のあった41通を除外した651通を分析対象とした.

地域包括支援センターと訪問看護ステーションの回答率は,ほぼ同数であった.保健師の回答率は15.3%,看護師の回答率は84.7%であった.

3-2. 研究結果(2)

結果「現状と期待との隔たりが顕著であるとされた概念9項目」と「現在の能力が優れていると考えられる概念3項目」が明らかにされた.

1) 現状と期待との隔たりが顕著な項目=コミュニティ・ナースとして必要な能力

(1)精神障害者へのケア

(2)虐待防止・人権擁護

(3)福祉用具・住宅改修

(4)多職種連携及び地域連携

(5)相談援助・問題解決―社会資源や関係法規を使いながら問題解決を図る能力

(6)指導教育―指導・スーパービジョン,各種療法に関する能力

(7)一般的マナー・人間関係―対象者やその家族との関係づくり,対応の態度

(8)認知症へのケア

(9)ケアプラン・連絡調整

2) 現在の能力が優れていると考えらえる項目=訪問看護師として必要な能力

(1)医療処置・観察・終末期ケア

(2)基本的生活援助―介護職との連携・協働が可能

(3)急変時対応

3) 「自由記載」から得られた期待する能力項目=訪問看護師として必要な能力

(1)コミュニケーション能力―信頼関係の構築,互いに了解できるレベルを調整することなど

(2)医療機器や処置の高度化に伴う技術力

(3)難病患者や重症児への看護能力

4. 調査結果からわかること(考察にかえて)

本研究は全国を対象として行われたが,広域に及ぶ研究は当時においては皆無で,かつ対象人数においても最多数であった.それゆえに10年前の研究ではあるが,現在の状況を慮るうえで充分参考になると思われる.

現時点において地域で働く看護職の多くは,実践の基盤を病院における病人の看護においている傾向にあるので,自らの強みとして医療処置や急変時のケアが挙げられるのは当然である.一方で,弱みの項目のほとんどは社会福祉領域と重なっている.コミュニティ・ナースの能力として求められるのは,まさにこの分野の知識と実践力である.加えてコミュニケーション能力が欠けていると判断された.現在の看護基礎教育では,この点に重点をおいたカリキュラムが組まれるようになっているが,人と人との関係性が希薄になりつつある今日の社会にあっては,さらにこの能力を高めるとともに,自らの人間性を豊かにする思考を培い,相手の気持ちを察することのできる人材育成が求められよう.

III. コミュニティ・ナースの活動の場

1. コミュニティ・ナースの活動形態(事例)

島根県雲南市の矢田明子さんが始めたコミュニティ・ナース活動が,今話題になっている.矢田さんが創った組織では,「コミュニティ・ナースとは,まちの人々とつながり,すぐそばで長く付き合いながら,専門性を地域で生かし,地域の健康に貢献していく人」と位置づけている.

また「暮らしの身近な場所で,事業や制度にとらわれない自由な活動を生み出しているのがコミュティ・ナース」であるとも言う.

現在,講座を開設して人材を育成中であるが,受講して育っていった人たちが全国に200名以上存在し,様々な活動を展開している.“おせっかいやき”という側面を大事にしながら,専門資格を問わず,誰でもコミュニティ・ナースになれるとして,その活動の場を広げようとしている.全国の看護学生たちに対してもその名を広げ,活動を理解してもらおうと独自の動きを起こしている.

2016年11月,矢田さんたちの活動と筆者の先の論文がマスメディアの目に留まり,NHKの朝番組<さきどり>で取り上げられ,コミュニティ・ナースの活動と存在が全国に伝わった.

2. コミュニティ・ナースの活動形態

看護師や保健師たちが始めた地域活動が今,社会の中に根づき始めている.彼らはコミュニティ・ナースという肩書では働いていないが,その活動形態は正にコミュニティ・ナースそのものである.

1) 「まちの保健室」「暮らしの保健室」

こころとからだの健康相談だけでなく,健康情報の提供や健康学習の支援,そして住民同士のコミュニケーションの場やネットワークづくりの場として,探せば全国に広がっているのがわかる.

2) 全国の地域包括支援センターに所属するナースたち

本来,地域包括支援センターの看護職は保健師とされているが,看護師資格の者も多く働いている.彼らはコミュニティ・ナースそのものである.

3. コミュニティ・ナースの課題

1)法的裏付けがない.

2)経営面での不安定さ.

3)誰がコミュニティ・ナースになるのか?

こうした課題を早急にクリアする必要性があるが,逆に,法的縛りがないので自由裁量が効き,活動が伸びやかになるという利点がある.この点を活かして,訪問看護ステーションと併設して拠点を作ったり,クリニックと併設する「町の保健室」を作るなど,安定化の道を探りながら,新たな活動の展開を模索すべきであろう.

4)カリキュラム改正のなかで「地域・在宅看護論」を担当する教員の意識がどこにあるかが問われる.

今後,地域看護をコミュニティケアとして位置づけるには,教育内容の十分な検討と質の豊かさが求められる.

IV. ドイツにおける看護の発展過程から学ぶ

1. なぜドイツの看護から学ぶのか

今後の地域包括ケアを支える人材の育成を考えるにあたって,日本の現状をふまえると,どうしても解決しておきたいテーマがある.それは「看護と介護」の関係である.日本の介護福祉士は1987年に社会福祉領域の専門職として誕生したが,その専門性の本質は,地域に暮らす人々に対して生活の自立と質の向上を目指して行われる“生活のケア”にある.これは看護が内包するケアの目的と完全に一致する.したがって,地域包括ケアの実現のためは,地域看護師=コミュニティ・ナースは,介護職と“連携と協働”の世界を現在よりも強固に創らなければならないことは明白である.しかしながら,この連携は学問レベルでも法制度レベルでも整っていない.相変わらず“看護と介護は違う”という立場をとり続けているのが現状であろう.

実は日本の介護福祉士はその資格形成過程において,ドイツのAltenpfleger/in(アルテンプレガー:女性名詞/アルテンプレゲリン:男性名詞)をモデルにしているとされ,ドイツの制度に倣っている面が多かった.ところが筆者が視察して得た事実から,ドイツには「介護福祉士」たちは存在しないことが明らかとなった.ドイツでは介護福祉士ではなく“老年看護師”として存在しているのだ.この事実をふまえて,ドイツの看護教育制度から学ぶべき点を整理しておきたい.

2. ドイツの“老年看護師”の育成とその実践

ドイツの看護教育制度は目下改革の途上にあるが,制度全体としてみると,看護師には3種類が存在している.

1)病院看護師(病院で一般患者の看護に当たるが,最近は地域ケアにも携わる)

2)小児看護師(病院で子どもの看護に当たるが,最近は地域ケアにも携わる)

3)老年看護師(特に地域で高齢者の看護に当たる)

入学を希望する者は,あらかじめどの領域で働く看護師になるかを決めて,3種類の看護学校のいずれかに入学して資格を取得する.最近では3資格を統合した資格がとれるよう大学化が進んでいるが,その卒業生はまだ少なく基本的にはマイスター制度が色濃く残るドイツの教育制度を踏襲している.

この中で「アルテンプレガー」は老年看護師であり,日本が説明している介護福祉士ではない.彼らは正規の「医療職」として活躍している.

3. 日本はドイツから何を学ぶべきか

日本でコミュニティ・ナースを育成し,発展させるためには,ケアの担い手としてドイツにおける「老年看護師」の存在は参考になるだろう.

対策の1つとして,看護教育カリキュラムの「老年看護学」の科目において,地域ケアに関する項目を強化することである.そうすれば看護師として地域ケアに携わる時にはその知識と技術が活きてくる.

2つ目の対策として,大学卒業の介護福祉士たちに看護師への道を拓き,社会福祉学と看護学の知識と技術を兼ね備えた人材として,コミュニティ・ナースの仕事を託すことである.大卒の介護福祉士たちに欠けているものは,医療系の知識と実践である.この点を強化すれば,ドイツのように優れた老年看護師を得られよう.

諸外国では介護と看護は1本の教育システムでつながっている.両者間には壁はなく,単位制であるため,単位を増やして学習を積み重ねれば,ヘルパーからでも大学院卒の看護師の資格をとることができる.これが「グローバル・スタンダード」である.日本も資格制度を見直し,諸外国と同様の位置づけをすべき時が来ているように思う.

V. イギリスにおける地域看護の発展過程

1. ナイチンゲールは公衆衛生分野の専門家だった

18世紀から19世紀にかけてのイギリスは,産業革命後の発展の陰で国の衛生環境は劣悪だった.こうした状況を改善すべく早くから公衆衛生の専門家たちが活躍している.特にナイチンゲールとの関係でみてみると,ナイチンゲールがまだ看護師として自立した人生を歩む前の20歳代前半において,彼女はすでに国内外の衛生状況や病院の環境衛生などに興味を抱き,手当たり次第に入手できる報告書や白書に目を通して学習していた事実がある.1848年にエドウィン・チャドウィックによって起案された公衆衛生法について周知もしており,またチャドウィックが編纂した大部の報告書『大英帝国における人口集団の衛生状態に関する報告書』にも目を通していたことも判明した.ナイチンゲールは若くして公衆衛生の専門家になるべく自己研鑽していたのである.つまりナイチンゲールはクリミア戦争に従軍する前から,感染対策や貧困や不衛生の問題に関心を抱き,自らの意見をはっきりと把持していたことが判るのである.戦後にそれが数々の業績となって表面化していく.

2. ナイチンゲールの衛生思想の発現形態

ナイチンゲールは生涯で150点以上もの印刷文献を書き遺した人物であるが,その代表的な書作は公衆衛生思想が具現化されたものといってよい.以下に彼女の衛生思想が発現している著作または論文を列記する.

①1857年:『病院覚え書』(第1版)

 1863年:『病院覚え書』(第3版)

 →病院の感染防止策と有効な病院設計

②1860年:『看護覚え書』

 →病院と家庭における衛生看護のあり方

③1869年:『救貧覚え書』

 →貧困者のための福祉政策

④1871年:『産院覚え書・序説』

 →産科病棟の感染防止策と有効な産院構造

⑤1876年:「貧しい病人のための看護」

 →District Nurseの創設と地域看護

⑥1893年:「病人の看護と健康を守る看護」

 →Health Missionerの創設と役割の明確化

⑦1894年:「町や村での健康教育」

 →Health Missionerの働き方と機構改革

3. “地域看護師=District Nurse”の創設

ナイチンゲールは“病院看護師”を育成する以前から,District Nurse(地域看護師=訪問看護師)の育成を考えていた.地域で暮らす貧しい人々への第一級の看護の提供が目的であった.

訪問看護活動はウイリアム・ラスボーンとの連携のなかで生まれたが,ナイチンゲールの地域看護師への期待は大きかった.彼女は貧しい人々にとって,いかに地域看護師の存在が不可欠であるかを強調したうえで,地域看護師はどうあるべきか,何をすべきかを具体的に論述している.以下にナイチンゲールの具体的言葉を示してみよう.

・われわれは,すべての母親が健康を守る看護師となり,貧しい病人はすべて自宅に地域看護師を迎えるその日の来るのを待とう.

・究極の目的は,すべての病人を家庭で看護することである.

・地域看護師は,家庭に住み込んでひとりの患者に付ききりで看護するのではなく,貧しい病人を自宅に訪問して看護にあたる看護師である.

・地域看護師はまず看護しなければならない.

・地域看護師は病院看護師よりもさらに高度な学習を積み充分な訓練を受けていなければならない.

・地域看護師は,病人だけでは解決できない衛生上の欠陥を,保健官や関係当局へ通報しなければならない.

・地域看護師は彼女自身何かを与えるということはないが,必要なものを提供したり,実生活上の要求に適当な措置を講じてくれたりする地方機関のことを知っているし,また知っていなければならない.

これを読めば,ナイチンゲールの地域看護師に向けた期待と方針がみえてくる.コミュニティのシステムを熟知したナースが求められているのがみてとれる.

4. “保健指導員(Health Missioner)”の創設

ナイチンゲールは,上記の地域看護師とは別の職種として新たに保健指導員(Health Missioner)を創設した.

ヘルス・ミッショナーの必要性とその役割については,以下の2つの論文にまとめられている.

①Sick-Nursing and Health-Nursing(病人の看護と健康を守る看護)1893年

②Health Teachings in Towns and Villages(町や村での健康教育)1894年

ヘルス・ミッショナーは,後にHealth Visitorとなり,英国における「保健師」として位置づけられている.

では,ヘルス・ミッショナーはどのような役割をもつ職種なのだろうか.以下,ナイチンゲールが示唆した方向性と希望について紹介する.

・われわれは,ひとつひとつの地域によく訓練された看護師と保健指導員とを必要とする.

・保健指導員の指導は,まず村落で講義をし,ついでそれぞれの家庭に入り,母親との話し合いという個人的な指導法が用いられる.

・保健指導員は,衛生問題に関しては協力体制をとることがいかに価値あるかを教える.

・全体的な状況の鍵になるのが,保健指導員になる希望をもっている教育のある女性である.

・話をしてまわる保健指導員は,田舎家の母親たちの多忙な生活に精通していなければならない.

保健師の先駆けとしての保健指導員は,村落の母親にとって身近な存在であり,家と家族の健康を守るために具体的な健康指導と健康教育をする職種として期待された.ナイチンゲールは家を守る女性たちに衛生を教え,健康的な生活の送り方について指導することで,社会に蔓延する感染対策を行い,特に子どもたちの健康を守ろうとしたのである.

5. 現在のイギリスの地域ケアシステム

イギリスでは,地域ケアは全て公的医療保障制度(NHS)に位置づけられているので,病院医療と共に全ての国民が利用可能である.

地域看護師を広くコミュニティ・ナースと呼び,コミュニティ・ナースは,プライマリケアで主に地域・在宅患者に対するサービスを提供する看護師の総称として使われている.

地域ケアの担い手としては,(1)GP(General Practitioner)と呼ばれている家庭医が存在している.家庭医は診療所に勤務し,入院が必要な患者には病院を紹介する.(2)District Nurse(地区/訪問看護師)が地域ケアの主役である.彼らの中には 診療所に配属されると独立した診察室で診療する者も現われ,ナース・プラクティショナーへとつながっている.(3)Health Visitor(保健師)も地域ケアの重要な担い手である.現在は学校看護師や産業看護師と共に,公衆衛生専門看護師(specialist community public health nurse)として免許登録をしており,家庭訪問をするほか,子どもセンターなどを拠点に,妊産婦と5歳未満の乳幼児の健康管理と子育て支援に従事している.イギリスにおいて助産師は,看護師とは別の職種として独立しており,保健師と共同して働いている.

イギリスの医療保障制度は,短期間に新たな編成が断行される傾向にあり,本誌ではごく最近の情報を紹介できない点をお断りしておく.

VI. おわりに―日本のコミュニティ・ナースのこれから―

今,わが国では保健師と訪問看護師の間にあって,住民の健康ニーズに応えることができるコミュニティ・ナースを,いかに養成していくかが問われている.

まずは,基礎教育においてコミュニティ・ナースの立ち位置を明らかにし,活動のための具体的方法を模索することから始めなければならない.育成にはおそらく2単位以上の授業計画が必要であろう.できれば,2単位の実習も組み込みたい.

またコミュニティ・ナースのあり方は,今後,多職種連携教育の中で学べる可能性がある(2017年度からの厚労科研事業).

厚生労働省は,看護師,介護福祉士,社会福祉士,精神保健福祉士,理学療法士,作業療法士の6資格について,その資格取得のための共通基礎課程モデルカリキュラムを検討している.この制度が完成すれば,看護師の資格を有しながら,地域ケアを担う人材としての知見や技術の習得が容易になることから,筆者が目指すコミュニティ・ナースが誕生する土台が出来上がる.多職種連携の真の姿をみることが可能となる時代の到来に期待したい.

文献
  •  金井 一薫(2013):我が国における“コミュニティ・ナース”養成の必要性と可能性についての提言,東京有明医療大学雑誌,5, 1–9.
  •  川上 嘉明, 金井 一薫(2012):地域ケアを担う看護師が期待する看護の能力―地域で活動する看護師への調査から,東京有明医療大学雑誌,l(14), 17–27.
  • Nightingale F. (1876–94)/湯槇ます監修,薄井坦子編訳(1974):ナイチンゲール著作集第II巻,54–183,現代社,東京.
  •  白瀬 由美香(2014):イギリスの地域看護師の歩みと医師職との関係,公衆衛生,78(1), 20–23.
  • Woodham-Smith C. (1950)/武山満智子,小南吉彦訳(1981):フロレンス・ナイチンゲールの生涯[上巻],1–430,現代社,東京.
  • 矢田明子(2019):コミュニティナース,9–263,木楽舎,東京.
 
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