一般社団法人全国保健師教育機関協議会(以下,本協議会)の機関紙であるオンラインジャーナル「保健師教育」第8巻の発刊に際し,まずは,令和6年(2024年)に発生した能登半島地震により被災された皆様,およびそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます.皆様の安全と被災地の一日も早い復興,そして被災された皆様の生活が1日も早く平穏に戻ることをお祈り申し上げます.
我が国は数々の災害を経験し,その都度,貴重な教訓を学び,防災・減災対策を講じてきました.しかし,一つとして同じ災害はなく,支援にあたる専門職には,正解や経験値がない中でも,災害の状況や地域の特性を踏まえながら,その場に応じた柔軟かつ専門性の高い活動が求められます.つまり,専門職とは,その専門知識や技術,倫理観を基盤に,どんな困難な状況でも最適な方略を導き出し,その解決策を実行に移すことができる力を兼ね備えていることが不可欠であると言えるでしょう.
2023年度より2か年計画で,学士課程における看護師基礎教育に焦点を当てた文部科学省「看護師教育モデル・コア・カリキュラムの改訂に向けた調査研究」事業が開始となりました.今回の改訂のポイントは,“何を教えるか”というコンテンツ・ベースのアプローチから,学習力や学習者の主体性を基盤とした“何ができるようになるか”を重視するコンピテンシー・ベースに転換することです.Society 5.0の到来に向けた技術革新やそれを産み出す創造性の必要性から,これらを確実に成し遂げられる資質・能力とは何かを明確にし,職業教育・生涯教育に反映するという世界的な潮流を汲んだものです.この能力・資質であるコンピテンシーの明確化は,その職種の教育に反映することはもちろん,他者に向けたその専門性や特性の説明と自己表現にもつながります.
このような動向を踏まえながら,保健師教育に目を転じますと,本協議会は,2023年に全国保健師長会および日本公衆衛生看護学会と協力し,「保健師の未来を拓くプロジェクト」を立ち上げました.このプロジェクトでは,保健師関連団体である日本保健師連絡協議会と連携しながら,デルファイ調査を実施し,保健師のコア・バリューとコア・コンピテンシーを明らかにしました.この調査の意義は,保健師の総意に基づき,保健師とは何であるかについての共通認識を得たことにあります.今後,本協議会では,この保健師のコア・コンピテンシーを踏まえ,看護学教育モデル・コア・カリキュラム改訂と並走しながら,保健師教育のモデル・コア・カリキュラム改訂を進めてまいります.併せて,保健師教育の質の向上に向けた各種取り組みをさらに推進してまいりますので,会員校の皆様には,本協議会の活動へのさらなるご理解とご協力をお願い申し上げます.