2025 年 9 巻 1 号 p. 32-37
世界的な感染症の脅威は,公衆衛生における重要な課題として認識され続けている.特に2020年以降のCOVID-19パンデミックは,感染症対策における保健師の役割の重要性を浮き彫りにした.
このような社会的要請を受け,2020年の保健師助産師看護師学校養成所指定規則の改正では,感染症を含む健康危機管理に関する教育の充実が図られた.特に「公衆衛生看護学」の単位数増加により,より実践的な教育内容の導入が可能となった(厚生労働省,2019).しかしながら,この教育改革が実際の学習者にどのような影響を与えているかについては,まだ十分な検証がなされていない.
感染症の健康危機管理能力の習得には,知識の理解だけでなく,実践的な判断力や対応力の獲得が不可欠であると考えられる.一般社団法人全国保健師教育機関協議会(以下,全保教)健康危機管理対策委員会では,「感染症の健康危機管理に強い保健師の卒業時の到達目標」(以下,感染症健康危機管理到達目標)を策定し,その妥当性を検証している(鈴木ら,2023).しかしながら,この到達目標に対する学生の達成状況や,学習過程における課題については十分に明らかにされていない.保健師基礎教育の質を向上させるためには,教育内容や方法の充実とともに,学生の学習到達度を適切に評価することが重要である.特に感染症の健康危機管理に関する教育内容について,学生がどの程度理解し,実践力を身につけているかを把握することは,教育プログラムの改善に不可欠な要素となる.
さらに,「保健師学校養成所における基礎教育に関する調査報告書」(岸ら,2018)によると,公衆衛生看護学実習における体験項目の割合,卒業時の到達度,国家試験合格率,就職割合のすべての項目で「大学院」「1年課程」が他の教育課程と比較して高い結果となっていることが示されていた.そのため,感染症健康危機管理教育の現状等に関しても「上乗せ教育」と「4年間での教育」では,教育内容や学生の目標到達度に差があると予想され,教育区分による差を踏まえた分析も必要であると考えた.
そこで本研究では,保健師養成課程に在籍する学生を対象として,感染症の健康危機管理に関する講義・演習養育の受講や実習体験の状況,目標の到達状況について養成機関の差を踏まえて明らかにすることを目的とした.本研究で得られる知見は,今後の保健師基礎教育における感染症対策教育の向上に寄与することが期待される.
調査対象は,全国の保健師養成機関293校(2022年4月現在)の最終学年学生(4年課程は4年生,大学院は2年生)である.
Webによる無記名自記式質問紙調査にて回答を回収した.データ収集期間は2023年2月から3月であった.
2. 調査項目調査項目には,属性情報として,性別,年齢,保健師としての就職希望,保健師養成の区分,保健所実習先,予定どおりに実習できたかを確認した.保健師養成の区分は「上乗せ教育」として,大学院,大学専攻科,短大専攻科,養成所(1年),「4年間での教育」として,大学(学部選択制,定員上限あり),大学(学部選択制,定員上限なし),大学(学部全員必修),養成所(統合カリキュラムで4年間で卒業),その他に分けた.
「感染症の健康危機管理に関する講義・演習・実習」として,感染症健康危機管理の講義・演習受講の有無,保健所実習での感染症健康危機管理に関する体験として説明,見学,実技の有無を確認した.
また,「感染症の健康危機管理に強い保健師養成のための卒業時の到達目標」(鈴木ら,2023)は,全保教健康危機管理対策委員会で開発し,調査によって妥当性を検証した10項目を保健師学生の何割が到達度に達していたかを0~10の整数で確認した.10項目には,感染症の健康危機管理を時系列に分け,平時3項目,危機発生時5項目,小康期・収束1項目,全期を通じた活動1項目が含まれていた.さらに項目ごとに「I少しの助言で自立して実施できる」「II指導の下で実施できる」「III学内演習で実施できる」「IV知識としてわかる」のいずれかの到達レベルが設定された.
3. 分析方法収集したデータを単純集計した.さらに保健師養成区分を「上乗せ教育」と「4年間での教育」に分け,グループ化変数とし,属性,感染症健康危機管理の講義・演習・実習,感染症健康危機管理到達目標の到達割合に関する各項目の差を解析した.統計学的解析における学生数は連続変数であり,その他の項目はカテゴリカル変数であったため,連続変数に対しては,Shapiro-Wilk検定(Shapiro et al., 1965)とヒストグラムの描画による目視により,正規分布に従っていなかったため,Mann-Whitney U検定にて解析した.またカテゴリカル変数に対しては,カイ二乗検定にて解析した.ただし,期待度数が5未満のセルが20%以上の場合はFisherの正確確率検定にて解析した(Cochran, 1952).全ての解析は,SPSS ver.29を用い,有意水準は5%とした.
4. 倫理的配慮本研究は東京医科大学医学倫理審査委員会の承認(2023年1月承認,No.T2022-0228)を得て実施した.
本調査では,408人の学生から回答を得た.属性に関して,保健師養成区分は「大学(学部選択制,定員上限設定あり)」が309名(75.7%)で最多であった.公衆衛生看護学実習における実習先では「政令指定都市もしくは中核市,保健所政令指定市保健所」が200名(49%)と最も多かった.さらに,感染症健康危機管理の講義・演習・実習に関して,講義受講者は373名(91.4%)であり,演習受講者は207名(50.7%)であった.保健所実習での感染症健康危機管理に関する体験は,「説明」が372名(91.2%),「見学」が231名(56.6%),「実技」が95名(23.3%)であった.感染症健康危機管理到達目標の到達割合は,10項目の到達レベル(I~IVのいずれか)」に関して到達出来たと回答した学生は,60.3%~87.5%であった.このうち,到達割合が60%台と低かったのは「⑦クラスター発生時の積極的疫学調査と保健指導を行う」(60.3%)と「⑥患者・接触者への積極的疫学調査と保健指導を行う」の2項目でいずれも積極的疫学調査に関する項目であり,到達レベルはIII学内演習で実施できるであった(表1).
回答の記述統計量(N=408)
項目 | 選択肢 | n | % |
---|---|---|---|
属性 | |||
性別 | 男 | 20 | 4.9 |
女 | 378 | 92.6 | |
その他 | 2 | 0.5 | |
回答しない | 8 | 2 | |
年齢 | 29歳以下 | 397 | 97.3 |
30–39歳 | 6 | 1.5 | |
40歳以上 | 5 | 1.2 | |
保健師の就職希望 | 卒業してすぐに就職を希望 | 121 | 29.7 |
卒業して数年後の就職を希望 | 168 | 41.2 | |
保健師としての就職予定はない | 116 | 28.4 | |
その他 | 3 | 0.7 | |
保健師養成の区分 | 上乗せ教育(計) | 40 | 9.8 |
大学院 | 27 | 6.6 | |
大学専攻科 | 10 | 2.5 | |
短大専攻科 | 3 | 0.7 | |
養成所(1年) | 0 | 0 | |
4年間の教育(計) | 367 | 90.0 | |
大学(学部選択制,定員上限設定あり) | 309 | 75.7 | |
大学(学部選択制,定員上限設定なし) | 4 | 1 | |
大学(学部全員必修) | 9 | 2.2 | |
養成所(統合カリキュラムで4年間で卒業) | 45 | 11 | |
その他 | 1 | 0.2 | |
保健所実習先 | 都道府県保健所 | 170 | 41.7 |
政令指定都市もしくは中核市,保健所政令指定市保健所 | 200 | 49 | |
特別区保健所 | 41 | 10 | |
その他(複数の実習先の組み合わせ等) | 20 | 4.9 | |
保健所実習に行っていない | 23 | 5.6 | |
予定通りに実習できたか | 全員予定通りに臨地実習に参加できた | 235 | 57.6 |
一部学内実習も含まれた | 160 | 39.2 | |
全て学内実習となった | 5 | 1.2 | |
その他 | 7 | 1.7 | |
感染症健康危機管理の講義・演習・実習 | |||
感染症健康危機管理の講義・演習 | 講義 | 373 | 91.4 |
演習 | 207 | 50.7 | |
保健所実習での感染症健康危機管理に関する体験 | 説明 | 372 | 91.2 |
見学 | 231 | 56.6 | |
実技 | 95 | 23.3 | |
感染症健康危機管理到達目標の到達割合 「感染症の健康危機管理に強い保健師養成のための卒業時の到達目標」の到達レベル(I~IVのいずれか)を到達できた |
|||
①健康危機への地域のリスクをアセスメントし対応を検討する | (III学内演習で実施できる) | 356 | 87.3 |
②平時から住民への感染予防策を講じる | (II指導の下で実施できる) | 346 | 84.8 |
③健康危機に備えた地域の保健医療提供体制を整える | (IV知識としてわかる) | 367 | 90 |
④健康機器発生による地域のリスクを推定し対応を検討する | (III学内演習で実施できる) | 341 | 83.6 |
⑤住民への感染拡大防止策を講じる | (III学内演習で実施できる) | 336 | 82.4 |
⑥患者・接触者への積極的疫学調査と保健指導を行う | (III学内演習で実施できる) | 269 | 65.9 |
⑦クラスター発生時の積極的疫学調査と保健指導を行う | (III学内演習で実施できる) | 246 | 60.3 |
⑧健康危機発生時の地域の保健医療提供体制を調整する | (IV知識としてわかる) | 357 | 87.5 |
⑨対応を評価し改善する | (IV知識としてわかる) | 357 | 87.5 |
⑩健康危機管理に関する能力の向上を図る | (I少しの助言で自立して実施できる) | 309 | 75.7 |
保健師養成区分による各項目の差において,「上乗せ教育」は「4年間での教育」と比較して,年齢(p<0.001),保健師の就職希望(p<0.001),感染症の健康危機管理の講義受講(上乗せ教育:100% vs. 4年間での教育:90.5%,p=0.036),演習受講(70.0% vs. 48.5%, p=0.012),健康危機管理の臨地実習における実技体験の割合(37.5% vs. 21.6%, p=0.03)が有意に高かった.
一方で,「健康危機への地域のリスクをアセスメントし対応を検討する」(76.9% vs. 90.0%, p=0.028),「健康危機発生による地域のリスクを推定し対応を検討する」(69.2% vs. 86.7%, p=0.008),学生数(平均値[標準偏差]:12.6 [14.8] vs. 25.5 [17.4], p<0.001)は,「4年間での教育」が「上乗せ教育」と比較して有意に高かった(表2).
保健師養成区分における各項目の差(N=403)
項目 | 選択肢 | 大学院,大学専攻科,短大専攻科,養成所(n=40) | 大学(n=367) | p値 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
n | % | n | % | ||||
性別 | 男 | 2 | 5 | 18 | 4.9 | 0.773 | |
女 | 38 | 95 | 339 | 92.4 | |||
その他 | 0 | 0 | 2 | 0.5 | |||
回答しない | 0 | 0 | 8 | 2.2 | |||
年齢 | 29歳以下 | 36 | 90 | 360 | 98.1 | <0.001 | |
30–39歳 | 0 | 0 | 6 | 1.6 | |||
40歳以上 | 4 | 10 | 1 | 0.3 | |||
保健師の就職希望 | 卒業してすぐに就職を希望 | 27 | 67.5 | 94 | 25.6 | <0.001 | |
卒業して数年後の就職を希望 | 8 | 20 | 160 | 43.6 | |||
保健師としての就職予定はない | 4 | 10 | 111 | 30.2 | |||
その他 | 1 | 2.5 | 2 | 0.5 | |||
公衆衛生看護学実習における実習先 | 都道府県保健所 | 22 | 55 | 147 | 40.1 | 0.090 | |
政令指定都市もしくは中核市,保健所政令指定市保健所 | 15 | 37.5 | 184 | 50.1 | 0.137 | ||
特別区保健所 | 7 | 17.5 | 34 | 9.3 | 0.103 | ||
保健所実習に行っていない | 0 | 0 | 23 | 6.3 | 0.149 | ||
その他 | 3 | 7.5 | 17 | 4.6 | 0.432 | ||
予定通りに実施できたか | 全員予定通りに臨地実習に参加できた | 23 | 57.5 | 211 | 57.7 | 0.341 | |
一部学内実習も含まれた | 15 | 37.5 | 145 | 39.6 | |||
全て学内実習となった | 0 | 0 | 5 | 1.4 | |||
その他 | 2 | 5 | 5 | 1.4 | |||
感染症の危機管理の講義・演習 | 講義 | 40 | 100 | 332 | 90.5 | 0.036 | |
演習 | 28 | 70 | 178 | 48.5 | 0.012 | ||
健康危機管理の臨地実習 | 説明 | 37 | 92.5 | 334 | 91.3 | >0.999 | |
見学 | 24 | 60 | 206 | 56.3 | 0.738 | ||
体験 | 15 | 37.5 | 79 | 21.6 | 0.030 | ||
①健康危機への地域のリスクをアセスメントし対応を検討する | 学内演習で実施できる | 30 | 76.9 | 325 | 90 | 0.028 | |
②平時から住民への感染予防策を講じる | 指導の下で実施できる | 33 | 84.6 | 312 | 86.4 | 0.806 | |
③健康危機に備えた地域の保健医療提供体制を整える | 知識としてわかる | 34 | 87.2 | 332 | 92 | 0.358 | |
④健康機器発生による地域のリスクを推定し対応を検討する | 学内演習で実施できる | 27 | 69.2 | 313 | 86.7 | 0.008 | |
⑤住民への感染拡大防止策を講じる | 学内演習で実施できる | 32 | 82.1 | 303 | 83.9 | 0.819 | |
⑥患者・接触者への積極的疫学調査と保健指導を行う | 学内演習で実施できる | 30 | 76.9 | 238 | 66.1 | 0.210 | |
⑦クラスター発生時の積極的疫学調査と保健指導を行う | 学内演習で実施できる | 26 | 66.7 | 219 | 60.7 | 0.495 | |
⑧健康危機発生時の地域の保健医療提供体制を調整する | 知識としてわかる | 34 | 87.2 | 322 | 89.2 | 0.601 | |
⑨対応を評価し改善する | 知識としてわかる | 34 | 87.2 | 322 | 89.2 | 0.601 | |
⑩健康危機管理に関する能力の向上を図る | 少しの助言で自立して実施できる | 31 | 79.5 | 277 | 76.7 | 0.842 | |
学生数 | 平均値(標準偏差) | 12.6 | 14.8 | 26 | 17.4 | <0.001 |
本研究は,保健師養成課程に在籍する学生を対象として,感染症の健康危機管理に関する講義・演習の受講や実習体験の状況,目標の到達状況について,「上乗せ教育」と「4年間での教育」という養成機関の差を踏まえて明らかにすることを目的とした.結果として,「上乗せ教育」は講義,演習,臨地実習の受講率が有意に高い一方で,地域のリスクアセスメントやリスク推定といった実践的対応力に関する到達目標の達成率は,「4年間での教育」の方が有意に高いことが示された.さらに,感染症健康危機管理到達目標の到達割合が低いのは積極的疫学調査に関する項目であることわかった.
1. 集中的な実践体験が即戦力の育成に与える影響「上乗せ教育」では講義受講率が100%,演習受講率が70.0%,そして臨地実習における「実技」体験の実施割合が37.5%と,「4年間での教育」(講義受講率90.5%,演習受講率48.5%,体験割合21.6%)に比べて有意に高い数値を示した.これらの結果は,短期間に集中的な実技体験を提供する上乗せ教育が,学生に対して直接的な現場経験を促進し,即戦力となる基礎技能の習得に寄与していると考えられる.保健師の活動は机上の学習の身では理解が困難であることが報告されており(横山ら,2012),実際の現場での体験は,従来の教室内での理論学習では得られにくい,臨機応変な判断や迅速な対応能力の形成に貢献すると考える.感染症などの健康危機発生時において,現場での具体的な「実技」体験が,将来の実践において即戦力として機能する基盤となる.一方で,この集中的な実践機会は,短期的な取り組みであるため,各学生が同程度の成果を得ているかどうか,またその持続的な効果についてはさらなる検証が必要である.標準化された評価基準の整備や,実践内容の質の均一化に向けた取り組みが,今後の課題として挙げられる.
2. 長期的な反復学習が実践的判断力の育成に及ぼす影響「4年間での教育」では,「健康危機への地域のリスクをアセスメントし対応を検討する」および「健康危機発生による地域のリスクを推定し対応を検討する」という到達目標の達成率が,それぞれ90.0%および86.7%と,「上乗せ教育」(76.9%, 69.2%)に比べて有意に高かった.この結果は,実務経験や成熟度が高いとされる上乗せ教育群の方が高い評価をするであろうとの仮説と逆の傾向を示している.
この現象の一因として,自己評価の際の認知バイアスが考えられる(尾崎,2020).「4年間での教育」は上乗せ群と比較して若年である.彼らは,領域別実習等を経験しているものの,実際の現場におけるリスクマネジメントの複雑さや困難さに直面する機会は限られている可能性がある.その結果,実際の課題やリスクの多面性を十分に認識できず,自己評価においては過大に能力を評価する傾向があると考えられる.一方,「上乗せ教育」は,既に看護師としての免許を取得しているため,現場での実践経験や4年間の看護大学での経験を通じて,リスク評価や危機管理の複雑さを,身をもって感じる機会が多いと推察される.さらに「上乗せ教育」の学生は,今回の調査で感染症健康危機管理の講義・演習受講や保健所実習での実技体験割合も高く,よりよくリスクに関して理解している可能性もある.こうした経験や学習から,自己評価においては,より客観的かつ慎重な姿勢が表れ,結果として,同一の到達目標に関する自己評価得点が低くなる可能性がある.今後は,学生の主観的な自己評価だけではなく教員の客観的な実技の評価なども必要であろう.
3. 教育全体の課題と今後の展望本研究の結果,感染症健康危機管理到達目標の到達割合は,60.3~87.5%であり,特に積極的疫学調査に関する2項目が60%台と低い傾向にあった.これらの結果を踏まえて今後は,実践的なシミュレーション教育や具体的なケーススタディの導入,並びに長期的な効果検証を通じて,各教育プログラムの改善に取り組む必要がある.また,保健所実習など現場での実践経験の受け入れ体制を強化し,最新の現場動向を反映した教材の開発を進めることが,保健師教育全体の質向上につながると考えられる.
4. 研究の限界本研究は,横断的な学生調査に基づくものであり,回答率が限定的である点,またCOVID-19の影響下という特異な状況下で実施された点から,結果の一般化には留意が必要である.さらに学生の主観的な評価であるため,今後は教員からの客観的な実技評価も求められる.加えて,現行カリキュラムが改訂途上にあることから,今後の長期的な効果検証や,最新カリキュラム導入後の比較検討が求められる.縦断的な調査や実践評価を通じ,各教育プログラムの効果をより精緻に評価し,感染症健康危機管理に強い保健師の育成に向けた具体的な改善策を検討することが今後の課題である.
本研究は,保健師養成における感染症健康危機管理教育の現状と,上乗せ教育および4年間での教育の違いについて重要な知見を提供した.すべての保健師学生が十分な実践経験を積むとともに,現場の最新情報を反映した教育が展開されることは,感染症の健康危機に迅速かつ的確に対応できる人材の育成に直結する.今後は,教育内容のさらなる充実と実践的な学びの機会拡大に向けた取り組みが求められる.
本調査にご協力いただきました全国の保健師養成機関の学生の皆様に心よりお礼申し上げます.本研究は一般社団法人全国保健師教育機関協議会健康危機管理対策委員会の活動の一環として行いました.さらに,公益社団法人日本看護協会「感染拡大に備える看護提供体制の確保に関する調査研究助成」の助成金を得ました.