抄録
現在,都市から地方へ移住する者が増えているという動きがある。すなわち,⽛田園回帰⽜と呼ばれる新しいうねりが起こっているのである。この動きには多くの若者も含まれている。そして,人口減少によって厳しい状況に直面
している地域における再生の希望を見出している実践家や研究者も少なくない。こうした動きを踏まえた地域づくりに関する先行研究は,主に「よそ者」が地域および地域住民に与えるインパクトに焦点を当てていた。
しかし,著者の視点は地域から受け入れられ,地域を支え,地域づくりの担い手になっていくことが,移住若者の社会的自立の形成につながるのではないかというものである。その地域づくりの担い手になっていく過程を,地域の担い手育成実践として位置づけたい。それゆえ地域の担い手育成実践研究は,現代社会における若者の自己アイデンティティの形成と社会的自立の問題を探求することにつながるものと思われるのである。
本稿では,移住若者が地域の担い手になる過程において,地域の生活文化・伝統の学習,地域から受け入れられ,必要とされることで移住若者が地域へのアイデンティティを形成すること,また移住若者と地域の人たちとをつなぐ地
域づくりの⽛団体⽜(西表島エコツーリズム協会)の役割が重要であることを明らかにしたい。