現代社会学研究
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最新号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • ―学校組織改革に対する学校現場の受けとめ―
    高島 裕美
    2023 年 36 巻 p. 1-18
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の課題は,教員の長時間過密労働が社会問題化するなか,ミドルリーダー の導入・配置という形で定着しつつある学校組織改革が実際の学校現場に受け とめられる過程で生じる教員たちによる意味付けを追うことをとおして,教員 文化の現在の姿を明らかにすることにある。  聞き取りの分析から示されたのは,以下の点である。  まず,ミドルリーダーである教務主任には,学校の組織編制上は管理職の補 佐としての役割が求められる。しかし,実際の役割としては,授業の「補欠」 や学級担任への寄り添い,特別な支援が必要な子どもへのサポートなど,フレ キシブルな動きやケア的役割を担うことが求められてもいることが明らかに なった。  次に,こうした役割期待に対し,調査に応じた2人の教務主任のうち1人は それを受けとめ,ケア的役割に徹することで,教員集団の関係性がハイアラー キカルにならないように工夫しつつ教務主任としての役割を負うことに成功し ていた。一方,もう1人は,教務主任という役割に含まれる権威的な性質や,個々 の教員のやり方には干渉するべきではないという自身の教員像との葛藤から, その役割を受けとめきれずにいる姿が確認された。  1990 年代後半以降急速に進行した学校組織改革は,教員の多忙をはじめと するさまざまな学校課題に機動的に取り組むために,学校組織をハイアラーキ カルに再編することが企図されているものの,実際には,いわば意図せざる結 果として,現場においては,教員文化の機能不全をカバーする役割をも担いつ つあるといえる。
  • ―スーパーマーケットにおける部門別の考察―
    胡 亜楠
    2023 年 36 巻 p. 19-38
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    パート労働者の量的な増加とともに,職務内容の高度化と責任の拡大が進み, 基幹的な労働力として活用されている。同じ企業内でも配置された部門によっ てパート労働者の責任や,正社員が担当する職務と重なる程度は異なる。それ では,正規労働者とパート労働者はどのように分業・協業しているのか。そこ で,本研究はスーパーマーケットC 社の農産,デリカ,水産の三つの部門で の正社員とパート労働との分業と協業実態を調査し,パート労働者に任される 仕事の特徴とその要因について検討を行った。結果として,部門ごとに正社員 の職務や責任の重たさが異なることによって各部門での正社員とパート労働者 の分業と協業のあり方が異なっていることが示された。正社員とパート労働者 の職務分担を技術の高低を基準として分類すると,知識と技術を必要とする水 産部門での職務分担が質的に異なる「分離型」となる。最も技術が低い農産部 門では商品・売場に関する職務が重複する「一部重複型」となっている。しか し,この技術の差はパート労働者の賃金や評価に反映されておらず,パート労 働の処遇改善を図るには雇用形態によって決められた評価方法と賃金制度を見 直す必要がある。また,調査ではベテランのパート労働者は業務内容において 契約職員に接近していることが示された。契約社員とパート労働者との働き方 や処遇上の違いを分析することがパート労働者の処遇改善を探る糸口となると 考えられる。
  • 新藤 慶, 品川 ひろみ
    2023 年 36 巻 p. 39-40
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • 山本 堅一
    2023 年 36 巻 p. 41-57
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    コロナ禍をきっかけに,世界中でオンライン授業の普及が進んだ。学生を教 室に集めて対面で授業を行うことは,リスクがあったからだ。オンライン授業 をやってみると,意外と良いなと感じている教員,学生がいれば,やはり対面 の方が良いと感じている教員,学生もいる。  オンライン授業を2年経験し,ある程度コロナ禍が落ち着いてきた中で,わ れわれが進むべき道が目の前で二つに分かれている。コロナ禍以前の対面授業 に戻すか,オンライン授業の活用を継続するか,である。前者は平坦な,後者 は険しい道である。  オンライン授業を活用したこの2年間,さまざまな課題が噴出したのは確か である。その一方で,やはり授業は対面でなければいけない,という確たる根 拠も出てきていない。しかしながら,オンラインは止めて対面に戻そうという 動きの方が強いように感じられる。  本稿では,オンライン授業の実践例,北海道大学の学生と教員に取ったオン ライン授業に関するアンケート調査結果を紹介し,オンライン授業の可能性に ついて考察した。解決が難しい課題はあるものの,オンライン授業は部分的に でも継続していくべきである,ということは示されたのではないだろうか。特 に,講義形式の授業においては,オンライン授業を活用することで,学習者中 心の授業へと転換しうるという点は,教育効果と共に検証が期待される論点と なった。
  • -コミュニティ実践にかかわる調査から-
    松宮 朝
    2023 年 36 巻 p. 59-76
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
     2020 年春からのコロナ禍では,対面でのインタビュー調査,フィールドワー ク,学生の現地での調査実習など,コミュニティ実践の現場にかかわる調査活 動のほとんどすべてを中止せざるをえなくなった。こうしたなかで,コロナ禍 で激変した環境に対応しつつ,地域コミュニティの実践現場への調査,調査実 習でのかかわりをどのように継続・再開させるかが課題となった。この課題に 対して,本稿ではまず,地域コミュニティでの対面的なつながりが「悪」とさ れる政策がとられ,地域コミュニティ,コミュニティ実践が停滞もしくは中断 を迫られた状況を確認した。このことは,地域コミュニティをめぐる対面での 調査実習,調査研究にも大きな影響を及ぼしたのである。その上で,筆者のコ ミュニティ実践を対象とした量的調査,質的調査にかかわる調査実習を振り返 り,また,コロナ禍で調査をスタートさせた,屋外での支援活動と連携したア クションリサーチ,参与観察の成果と課題について検討した。コロナ禍に対応 したオンライン調査への移行は,調査方法の可能性を拡げた一方で,学生間の 調査スキル,地域コミュニティ参加,関係形成の継承については課題が残った。 以上のコロナ禍での調査実習と調査研究の検討から,①関係の継続と調査方法 の継承の持つ意味,②オンラインではつながることができない対象者へのアプ ローチの重要性という,対面調査の果たす役割が確認されたと考えられる。
  • ―ウェブ法と郵送法の比較を中心に―
    平沢 和司, 杉野 勇, 歸山 亜紀
    2023 年 36 巻 p. 77-93
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本で行われているウェブ調査のほとんどは,調査会社などのモニターを対 象にしているため,対象者が確率抽出されていないという問題がある。そこで 選挙人名簿(一部は住民基本台帳)から無作為に抽出した者を対象に,まず郵 便で調査を依頼しウェブで回答を求めた。ただし,ウェブ回答ができない(好 まない)対象者もいるので郵送法を併用したミックスモード調査とした。その 結果,(1)回答者に回答モードを選択させる同時型だとウェブ法は郵送法にく らべて選択されにくいが,ウェブ法を先行させる逐次型で,かつ第2モードの 郵送法を適切な時期に提示すれば,ウェブ法の回答比率を上げることができ, 最終的な回収率も郵送法で約10%ポイント付加された。(2)モードによって 回答傾向に多少の差異が検出されたが,回答者の属性を統制しても効果が残っ た質問はかなり限られていた。(3)以上の無作為抽出者と,非確率抽出者(調 査会社のモニター)では,約半数の質問で回答傾向に違いがみられた。データ の質を重視するのであれば,ウェブ法を中心として郵送法を併用するミックス モード調査の拡充が望まれるが,いかにそのコストを下げるかなど更なる議論 が求められる。
  • 竹中 健
    2023 年 36 巻 p. 95-98
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
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