現代社会学研究
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最新号
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  • 奴久妻 駿介
    2022 年 35 巻 p. 1-17
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    これまで日本に在住する外国人児童生徒の教育に関しては,多文化主義からの考察があまりされては来なかった。そこで,本研究では,文部科学省に設置された「外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議」の議事録を基に,国家レベルの議論の中で,外国人児童生徒の母語に対する教育はあくまで私的領域に留まるものなのか,あるいは,国家的な目標として公的領域に設定されるべき課題なのかという問いを立て,考察を行った。研究方法としては,同会議第1 回目から9 回目までの議事録を参考に,KHCoder による共起ネットワークの作成とコロケーション統計を用いた分析及び資料の質的考察の段階的な研究を行った。同会議における「日本語」と「母語」,「ボランティア」,「取組」のキーワードを基に内容の分析と考察を行った結果,そこでは,日本語教育が中心的な議題として設定されており,母語に関する議論は課題の共有はされてはいたが,その実践的提案においては未だ不十分な段階にある実態がわかった。まとめると,本議論では,外国人児童生徒の母語へのサポートの重要性を認識しつつも,最優先事項は日本語教育という立場があり,母語は尊重するものの,公的領域では,国家の統一性として日本語を学ぶべきという立場にある事がわかった。すなわち,共同体の善が優先されるコミュニタリアニズム的な多文化主義が共通前提としてある,というのが暫定的な結論である。
  • 梶井 祥子
    2022 年 35 巻 p. 19-20
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • 宮入 隆
    2022 年 35 巻 p. 21-38
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,コロナ禍で加速する在留資格の複線化を伴った外国人材の受入拡大傾向を捉え,統計資料の分析から道内における外国人材雇用の特徴を整理するとともに,農業分野もしくは農村での実態分析を踏まえて,地域的な受入体制の整備課題を検討した。北海道農業は市場環境の変化のなかで,家族労働力でまかなえる範疇を超えた規模拡大を成し遂げ,とくに,酪農畜産や施設園芸など労働集約的経営において外国人労働者が多く雇用されてきた。近年では,大規模酪農経営で顕著なように,技能実習生だけではなく,専門的な人材確保へと進展を見せている。日本人が雇用できなければ,さらに複数の在留資格を活用しながら,多様な場面で外国人労働者への依存が高まる可能性が高い。特定技能が新設され,外国人技能実習制度からの移行が進んだとしても,非熟練労働者として働く外国人の割合が高い北海道では,今後も10 年以内の一時的な移住というかたちでの受け入れが主流となっていくと考えられる。また,コロナ禍でも継続した外国人労働者への依存の高まりは,アフター・コロナの人材獲得競争の激化も示唆している。生活インフラの脆弱化している農村地域では,雇用条件や労働環境だけではなく,安心して働ける条件整備のために自治体を中心とする地域的な生活面での支援とともに,働く外国人を地域でともに暮らす生活者として受け入れていく地域住民の意識の醸成も欠かせない。
  • 新藤 慶
    2022 年 35 巻 p. 39-60
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    1990 年の改正入管法施行により増加したブラジル人・ペルー人の状況や,その集住地域として知られる群馬県大泉町の状況を検討した結果,第1に,定住者として来日したブラジル人・ペルー人の永住者化が確認された。ここには,日本生まれの日系4世の将来的な在留資格の確保といったねらいも見いだされる。一方,第2に,ブラジル人・ペルー人の経済状況は不安定であった。共働きが中心でも世帯年収は300 万円を少し超える程度である。そのなかで,非労働者の労働者化の進行がうかがえる。また,就学援助の受給率の高さなど,子どもの教育環境への影響もみられる。さらに第3に,こうした貧困の問題と並行して,日本語能力の低さの問題も見いだされた。大人も日本語能力に不安を抱えるが,子どもについても,他の外国人に比べて,ブラジル人は日本語指導が必要なくらい日本語能力が低い者が多くなっていた。そのなかで,第4に,大泉町では在留外国人の受け入れ体制の充実がみられた。当初から,町行政も受け入れを支援していた。また,子どもの教育についても,言語面を中心に充実した指導体制を構築していた。しかし,そのことが,「日本語学級にお任せ」といった形で,「外国人教育」への教員の当事者意識を低下させていた。今後の多文化共生のためには,在留外国人の実態の変化や多様化を把握し,外国人の声を聞きつつ,ホスト住民側も当事者意識を持って関わることが重要となる。
  • 工藤 遥
    2022 年 35 巻 p. 61-84
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,コロナ禍初期に北海道札幌市で「子ども宅食」活動を展開した子育て支援NPO が実施したアンケート調査のデータから,一斉休校や登園・外出自粛要請が子育て家庭に与えた影響について考察した。休校・自粛要請により,家庭内で母子だけで過ごす時間が長時間化する中,幼い子どもを持つ母親たちは,子どもの食事作りや家庭学習,生活習慣や健康面への配慮など,普段よりも多くのケアや教育,家事負担を抱え,就業面や経済的な面でも困難に直面していた。本調査では,母親回答者の9割以上が休校・自粛の影響で「困った」と回答し,特に就園・就学期の子どもがいる親でその割合が高かった。また,ストレス程度が高い回答者は普段よりも休校中ほど多く,特に普段からストレスが強い層ほど休校中のストレスや困り感も強いことが確認された。保育・子育て支援の利用が一般化した社会で,「子育ての社会化」機関がその機能を一斉に停止・縮小したことの影響は大きく,また,コロナ禍では家族ケアや女性の就労に関する平時からの問題もより深刻な形で顕在化した。こうした中で本調査では,食事提供型の支援が家事負担や食費の軽減にとどまらず,孤立感の緩和や精神的支援としても有用であることが示唆された。子育て問題の予防と解消のためには,緊急時も含めて「子育ての社会化」体制を機能させることとともに,公的支援の「切れ目」を埋める民間の活動に対する支援の拡充も重要である。
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