現代社会学研究
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日本の都市部に嫁いだ中国人女性の国際結婚における問題点
農村部の事例との比較から
張 玥
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キーワード: 国際結婚, 問題点, ストレス
ジャーナル オープンアクセス

2019 年 32 巻 p. 69-87

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抄録

日本人男性と外国人女性による国際結婚に関する考察は多くが農村部に嫁いだ外国人妻に焦点を絞って行われており,都市部在住の外国人妻の生活現実に関する検討が行われていない。また,外国人妻の中で中国人女性の占める割合が最も多く,更に,中国人妻全体の中で,2017 年の21 大都市における中国人妻の占める割合が42%になっているにもかかわらず,都市部に在住する中国人女性に視点を絞った研究は少ない。本研究は,先行研究で指摘された農村部の国際結婚に関する⚗つの問題点に基づき,都市部の状況を考察した上で,都市部と農村部の違いを明らかにする。その結果,以下のような仮説的な知見を得た。都市部では,言葉の問題は夫婦間コミュニケーションに農村部ほど深刻な問題になっていない。一方,都市部では,ストレスの要因が複雑化してきている。日本人との人間関係が形成し難しいこと,日本語教室,近隣,職場など社会生活の様々な面で,偏見・差別を感じること,文化的差異により夫婦関係に葛藤を感じること,言葉の制限で良い職に就けないことなどがストレスに繋がっている。以上のようなストレスの解消手段としては,都市部では,同国人ネットワークが有効に機能している。しかし,同国人ネットワークが有効に機能することは日本社会との交流が希薄になるという逆効果にもつながる。その結果,日本文化に溶け込めないまま,夫婦間における文化的差異は一向に縮まらない。そのため,行政の面で,結婚移住女性にとって利用しやすい支援活動の在り方を考察する必要がある。

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© 2019 北海道社会学会
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