2021 年 34 巻 p. 39-56
本研究は,日本のポップカルチャーの一ジャンルである特撮が,戦後日本に興ったアヴァンギャルドの影響を受け,「ドキュメンタリー性」,また前衛的な映像表現が見られる点について考究するものである。花田清輝らによって牽引された戦後アヴァンギャルドの思潮は,その具現化の一つとして大島渚らの手でドキュメンタリー映画に結実した。またその効果を高めるために前衛的な映像が用いられた。脚本家の佐々木守や監督の実相寺昭雄は大島らとともに,アヴァンギャルドの運動に関わっていたことで,『ウルトラマン』シリーズにもアヴァンギャルド的な発想,主張が現れることとなった。この点に鑑み,ドキュメンタリー映画,また伝統的なドキュメンタリーの手法をフィクションと統合した,フランスの映画の思潮,ヌーヴェル・ヴァーグについて,本研究に関わる点に絞って論じた後,佐々木と実相寺の作品を取り上げて,具体的な映像分析を通して,特撮におけるアヴァンギャルドの具象について論じていくこととする。