1992 年 5 巻 p. 86-108
この小論の目的は、近年の東京圏からの企業立地に特有な二つのパターンが存在することを明らかにし、それが地域の形態、構造の変化にどのような影響を与えているのか、与えるのかを提起することにある。その企業立地の特有な型とは、第一に、波紋型立地、第二に、圏域型立地である。これらの型はPushとPullの二つの要因の相乗効果によって規定される。前者に着目すれば、技術革新による工場間分業の再編、情報システムの確立、東京圏一極集中に伴う物理的条件の確保の困難、労働力確保の問題であり、後者の要因として、住機能―都市機能ーリゾート機能の三角型機能連環によって誘発される企業サイドかちみてのアメニティ効果である。とりわけ企業の立地行動を規定する新しい要因の一つとしてアメニティ効果を指摘するのが本論文の意図である。