現代社会学研究
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学歴社会論再考
伝統的アプローチと制度論的アプローチ
竹内 洋
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1994 年 7 巻 p. 1-32

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抄録

近代社会は雇用や地位達成において学歴が大きな規定力を持つ学歴社会である。では、なぜ学歴が地位達成におおきな比重を占めるのか。この問については技術機能主義や人的資本論、スクリーニング理論、訓練費用理論、葛藤理論など様々な説明がなされてきた。しかし、本論はこれらの伝統的アプローチに大きな欠陥があり、むしろジョン・マイヤー(John Meyer)をパイオニアとし、代表者とする制度論派の「教育論」(制度としての教育論)と「組織論」(制度的同型化論)を学歴主義の説明理論として読み直すことが重要という指摘をおこなっている。そこでまず複数の伝統的アプローチを整理するためにふたつの前提(メタ理論)から考察している。ひとつは学校効果についての前提(学歴の供給の理論)であり、それを社会化と配分に分類している。もうひとつは、雇用についての前提(学歴の需要の理論)であり、それを効率と統制に分類している。このふたつの前提を組み合わせることによって複数の伝統的な説明理論を整理するとともに、その欠陥が明らかにされる。そのあとに、学校効果と雇用の理論について異なった前提をおく制度論的アプローチの新しさと有効性を示している。最後にこうした制度論的アプローチを導きの糸としながら、日本社会における学歴主義の誕生と展開についての経験的研究の方向と可能性について若干の提言をおこなっている。

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