The Horticulture Journal
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原著論文
鉢植えカンキツ樹の水分状態と果実品質に及ぼす海水潅注処理の影響
山田 寿瀧本 章太俊成 大輔片岡 圭子羽生 剛
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2015 年 84 巻 3 号 p. 195-201

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抄録

カンキツの果実品質改善に向けた塩ストレス利用可能性とその生理を明らかにするために,ウンシュウミカン 2 品種と‘宮内イヨカン’の鉢植え樹に海水を潅注処理した.海水原液と 2 倍希釈液は土壌 EC を有意に上昇させ,葉の水ポテンシャルを異なる程度で低下させた.葉の水ポテンシャルに及ぼす海水濃度の影響は,日中よりも日の出前の測定で明確だった.原液区は葉の Na 含量と落葉を対照区と比べて有意に増加させたが,2 倍希釈区は Na 含量をわずかに増加させたものの有意な落葉を誘導しなかった.海水処理は果実の肥大成長を抑制したが,果形や果肉歩合には影響を及ぼさなかった.海水処理区の果汁の可溶性固形物含量は品種によって 0.8 ~2°Brix 程度対照区より高くなり,還元糖やショ糖が増加した.海水処理は酸含量の低下を遅らせる傾向が認められたが,収穫時において対照区と 2 倍希釈区との間に有意差はなかった.以上の結果から,日の出前の水ポテンシャルが対照区よりも 0.3 ~0.5 MPa 程度低い,2 倍希釈海水による軽い塩ストレスは,障害を誘導することなく果実品質を改善できることが明らかとなった.また,海水処理による塩ストレスは,土壌乾燥処理と同様な浸透調節作用を通じて果実品質に影響することが示唆された.

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