The Horticulture Journal
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原著論文
トレニアの易変性系統「雀斑」の自殖後代に現れた背軸側花弁が向軸側花弁に変換した変異体
仁木 智哉佐々木 克友四方 雅仁川崎(鳴海) 貴子大坪 憲弘西島 隆明
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2016 年 85 巻 4 号 p. 351-359

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抄録

トレニアの易変性系統「雀斑」の自殖後代において,背軸側花弁が向軸側花弁へと変換した変異体を選抜し,「ベゴニア」と命名した.トレニアの正常型の花では,向軸側花弁は全体が淡紫色となり,背軸側花弁および側方花弁の縁辺が濃紫色に着色するとともに,背軸側花弁では蜜標が形成される.これに対して,「ベゴニア」では,背軸側花弁も全体が淡紫色になるとともに,蜜標が消失していた.花芽発達過程を観察した結果,「ベゴニア」に特徴的な着色パターンは花弁の着色初期から認められた.花の相称性を決定する遺伝子である CYCLOIDEACYC),RADIALISRAD), DIVARICATADIV)のトレニアにおけるホモログの発現量を解析したところ,正常型の花では,TfCYC1TfCYC2TfCYC3 および TfRAD1 は向軸側花弁で主に発現していた.これに対して,「ベゴニア」では,これらの遺伝子が向軸側花弁とともに背軸側花弁においても同程度に発現していた.以上の結果から,「ベゴニア」で背軸側花弁が向軸側花弁へと変換したのは,背軸側花弁において TfCYC1TfCYC2TfCYC3 および TfRAD1 が向軸側花弁と同程度に発現することが原因であると考えられた.

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