ウメ‘南高’果実の着果位置の違いが果実の成熟や化学成分含量に及ぼす影響について,4年間調査した.いずれの年も,収穫指標とした毛じの抜け具合が30%以上となった時期が内層の果実では遅く,収穫の開始が外層の果実よりも4~10日遅かった.果実重,果皮色L*値およびb*値は,果実発育が進むにつれて増大し,硬度は減少する傾向があったが,樹冠の内層と外層の青果収穫開始期に採取した果実間で比較すると,両者に差はなかった.果肉のクエン酸,ソルビトールおよびβ-カロテン含量は,果実発育が進むにつれて増加する傾向であったが,樹冠の内層と外層の青果収穫開始期に採取した果実間で比較すると,両者に差はなかった.一方,ポリフェノール含量および抗酸化能は,果実発育が進むにつれて減少する傾向があり,樹冠の内層と外層の青果収穫開始期に採取した果実間で比較すると,内層の果実で少なかった.これらの結果は,内層の果実は収穫を遅らせることにより,果実重やいくつかの機能性成分を外層の果実と同等にできるが,ポリフェノール含量や抗酸化能は同等にできないことを示している.