日本におけるニホンナシ(Pyrus pyrifolia Nakai)栽培は,数百年にわたり平棚施設の下で行われてきたが,低い植栽密度により成園化に長時間を要するため改植が困難である.そこで,我々は「樹体ジョイント仕立て法」と呼ばれる新しい栽培技術を開発した.この技術は,苗木を直線状に植栽し,隣接する樹同士を接ぎ木連結することで,せん定の省力・簡易化と早期成園化を目的としており,日本国内で現在普及拡大中である.
樹形の特徴は,水平方向の直線状主枝とそこから発生する均一な側枝であり,生産上の利点は早期多収に加え,単純な樹形構造による栽培管理の簡易化と労働時間の削減である.
この技術のアイデアは1993年に生み出され,2012年に神奈川県の特許技術となった.我々は,接ぎ木部を介した隣接樹の間の水や同化産物の樹体間移行を調査し,この栽培技術が均一な生育を示すことを裏付けるデータを得た.この革新的な栽培技術は,従来の仕立てやせん定における伝統的技術を変えるとともに,わい性台木や根域制限によらない新たな高密植栽培技術として位置付けることが可能であろう.この技術は,他の様々な果樹品目にも適用されてきたが,これら応用研究において,「ジョイントV字トレリス樹形」が機械化に最も適すると考えられ,現在,自動収穫技術などの機械化・自動化に向けた研究開発が行われている.
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