園芸学研究
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原著論文
育種・遺伝資源
  • 堀 礼人, 森谷 茂樹, 末貞 佑子, 守谷 友紀, 清水 拓, 澤村 豊
    2026 年25 巻1 号 p. 1-13
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究ではわい性台木に接ぎ木した40年生を超えるリンゴ樹について,樹体特性,果実品質および収量性について調査を行った.樹体特性では,相対的なわい化程度は成木期までの評価と同様に,樹体の大きさはJM5台樹が最も小さく,JM1,JM7,JM8およびリンゴ台木盛岡9号台樹が続き,JM2台樹が最も大きかった.しかし,すべての樹で樹幅が栽植距離より大きくなっており隣接樹に干渉していた.果実品質でも成木期と同様の傾向があり,JM5台樹およびJM7台樹で高い品質の果実生産が継続できることがわかった.収量性については樹当たりの収量は低下していないものの,樹冠面積当たりの収量である収量効率は低下していた.成木樹との比較から,老木樹では樹冠中心部における収量効率が低いことがわかり,樹体が大きくなって,樹冠中心部の結果枝が少なくなることで収量効率の低下を引き起こすと考えられた.これらのことから,40年を超えるわい性台木を用いた栽培では,果実品質および収量は成木期から維持されるものの,樹体が大きくなりすぎており,改植か間伐を行う必要があることが明らかとなった.

土壌管理・施肥・灌水
  • 伊藤 優佑, 田川 愛, 宍戸 良洋
    2026 年25 巻1 号 p. 15-20
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー

    1つの植物体に3つの果実および3つの側枝を着生させたキュウリのシンク・ソースモデルにおいて,果実の生育ステージごとの光合成産物の転流・分配について調査した.また,果実と側枝の生育制御方法を見出すことを目的とし,培養液のECがキュウリの光合成産物の転流・分配に及ぼす影響について試験を実施した.果実の生育ステージ別13C-光合成産物の分配パターンは,フィード節果実の開花前から果実肥大期にかけて,フィード節全体の分配率が25.4%から91.9%に増加した.また,果実肥大後期におけるフィード節への分配のうち,果実への分配率が最も高く63.2%であった.以上のように,キュウリにおいて果実の成長に伴って果実への13C-光合成産物の分配率が高くなることを明らかにした.異なる培養液EC条件下における13C-光合成産物の分配パターンを見ると,果実肥大中期において低EC区で高EC区よりフィード節側枝への分配がやや高かった.さらに果実肥大後期では,低EC区で側枝の分配率が高く,高EC区で果実への分配率が高かった.これらのことから,本試験において,低EC管理は側枝の成長を,高EC管理は果実の成長を促していることが推察された.EC制御は相対的に栄養成長,生殖成長のバランスをコントロールできる1つの方法であると考えられた.

栽培管理・作型
  • 小倉 優依, 山下 紗佳, 元木 悟
    2026 年25 巻1 号 p. 21-31
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー

    アスパラガスの新栽培法である1年養成株全収穫栽培法(以下,採りっきり栽培)は,低コストかつ省力的で,高品質多収栽培が可能であるため,全国に普及しつつある.本研究では,採りっきり栽培(露地栽培)およびハウス採りっきり栽培における収益性の向上を目的とし,栽植密度の違いが生育および収量に及ぼす影響を調査し,経済性について考察した.その結果,生育について,採りっきり栽培(露地栽培)では,単位面積当たりの有効茎数を除き,慣行区および密植(2条)区は同等であった一方,ハウス採りっきり栽培では,株当たりの有効茎数および最大茎径について,慣行区が密植(2条)区に比べて有意に高い値であった.収量について,採りっきり栽培(露地栽培),ハウス採りっきり栽培ともに,総収量および可販収量は,密植(2条)区が慣行区に比べて高い値であった.採りっきり栽培(露地栽培)およびハウス採りっきり栽培は,露地長期どり栽培およびハウス半促成長期どり栽培に比べて短期間で収量が多く得られ,高価格の時期に収穫できた.採りっきり栽培(露地栽培)およびハウス採りっきり栽培の栽培期間は,露地長期どり栽培およびハウス半促成長期どり栽培に比べて短いため,密植栽培による株間の競合やアレロパシーの影響などが小さい可能性がある.採りっきり栽培(露地栽培)およびハウス採りっきり栽培では,栽培管理や病害虫対策などについて,さらに検討する必要があるものの,2倍以上の栽植密度においても高品質多収となり,収益性が向上する可能性がある.

  • 牧田 尚之, 市村 一雄, 佐藤 百花, 奥村 義秀, 池内 都
    2026 年25 巻1 号 p. 33-38
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー

    キク類の切り花では切り花長を90 cmにすることが一般的である.しかし,生け花や花束加工の利用場面では90 cmは長すぎるため,より短い切り花の流通が必要とされている.従来よりも短い切り花を生産する技術を短茎栽培と呼んでいる.しかし,短茎栽培が切り花の品質と日持ちに及ぼす影響はほとんど明らかにされていない.そこで,スプレーギク‘アイセイカーラ’と‘セイヒラリー’において従来の方法により90 cm用に栽培した切り花と短茎栽培により70 cm用に栽培した切り花の品質および日持ちを調査した.‘アイセイカーラ’では切り花品質,日持ちともに90 cm区と70 cm区に差はみられなかった.‘セイヒラリー’では短茎栽培により50 cm切り花の花蕾数は減少し,生け水に後処理剤を添加した場合に日持ちは短縮した.しかし,両品種ともに,すべての試験区で品質は出荷規格を満たし,20日以上の日持ちを示した.以上の結果から,短茎栽培により生産した切り花の品質と日持ちは従来の切り花から大きく低下することはないことから,短茎栽培の有用性が示された.

  • 山内 大輔, 山本 岳彦, 室 崇人, 木下 貴文
    2026 年25 巻1 号 p. 39-46
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー

    北東北地域におけるタマネギ秋播き栽培の定植時期は降雨が多く,定植作業の遅れや大規模化の制限要因となっている.定植可能日を拡大するために,播種日を同一とし,定植日を変えた試験を行い,生育および収量に及ぼす影響を調査した.定植日が早いほど,りん茎重が大きく,抽苔率は定植日によらず低かったため,収量は,定植日が早いほど大きかった.その要因として,定植日が早いほど,越冬前の総乾物重が大きくなったため,収穫時のりん茎重が大きくなったと考えられた.播種から定植日および定植日から越冬前までの相対成長率(RGR)は,定植日が早いほど大きかったため,越冬前の初期生育は定植日が早いほど大きくなったと考えられた.以上のことから,慣行より早期の定植をすることにより,増収を伴いつつ,定植適期の幅を広げられることが可能であると考えられた.

  • 櫻井 直樹, 福田 文夫, 福井 隆介, 重安 結衣, 村元(河村) 美菜子, 阿部 遼, 佐野 大樹, 河井 崇, 平野 健
    2026 年25 巻1 号 p. 47-55
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー

    二倍体ブドウ(Vitis spp.)3品種(‘瀬戸ジャイアンツ’,‘マスカット・オブ・アレキサンドリア’,‘シャインマスカット’)と四倍体ブドウ3品種(‘ピオーネ’,‘オーロラブラック’,‘藤稔’)の樹上果粒の軟化を知るために非破壊振動法で未熟期から成熟期まで第3共鳴周波数(f3)を測定した.f3は果粒の硬度を示し,果実の生育とともに減少した.f3の減少曲線は下記の逆シグモイド式で近似できた.

    ここに,Yf3Xは測定日,abcdは係数である.これらの係数を用いれば,ベレーゾン期の前に測定したf3からベレーゾン期に達するまでの「到達日数」が予測できることがわかった.2023と2024年の軟化曲線の結果を比較すると,年次差がある品種でも,曲線が単に平行移動しているだけのものがあった.平行移動している品種では,ベレーゾン期に達するf3が同じならば,ベレーゾン期までの「到達日数」が年によらず精度高く計算できることがわかった.次に,ベレーゾン期の果粒が示すf3(ベレーゾン期周波数)を,果粒の触診あるいはレオメータによる果粒硬度から決定した.この値と逆シグモイド式から得られた係数を用いて,各品種のベレーゾン期までの「到達日数」を計算した.2023と2024年のデータを統合して得られた係数から計算された「到達日数」の年次差は,‘マスカット・オブ・アレキサンドリア’(3.9日)を除き,0.0~3.2日であった.

  • 厚見 治之, 浅野 峻介, 浅尾 浩史, 矢奥 泰章, 西本 登志
    2026 年25 巻1 号 p. 57-64
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー

    イチゴ生産における新たな花粉媒介昆虫としてヒロズキンバエの利用が広がっている.しかし,ハエ類は食中毒細菌等の媒介虫であり,受粉用ヒロズキンバエの飼養には食用肉が用いられているため,ヒロズキンバエの衛生面における知見が求められる.そこで,ヒロズキンバエ,既存の花粉媒介昆虫であるセイヨウミツバチおよびイチゴ果実の生菌数と細菌叢を調査した.ヒロズキンバエの成虫1 g当たりの生菌数は,1月を除きミツバチより有意に多かった.一方で,果実表面の生菌数はヒロズキンバエを放飼した場合とミツバチを放飼した場合でほぼ同等の傾向を示した.16SrRNAアンプリコン解析の結果,ヒロズキンバエの蛹と成虫の体表面における細菌叢は異なり,それぞれBacilli綱とGammaproteobacteria綱が優占していた.ミツバチの成虫では割合が高い順にGammaproteobacteria綱,Bacilli綱,Alphaproteobacteria綱,Betaproteobacteria綱,Actinobacteria綱が存在した.ヒロズキンバエとミツバチで受粉した果実ではGammaproteobacteria綱とAlphaproteobacteria綱の割合が異なり,花粉媒介虫の違いによる影響が示唆された.いずれの試験でもヒトに対する病原細菌は検出されなかった.

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