イチゴ‘女峰’を用いて,高CO2濃度条件下(日中800~2,500 ppm)での栽培における培養液濃度と摘果の影響について検討した.培養液は大塚A処方を30~50%濃度で適宜変更する慣行区を標準として,濃度をその1.2倍,0.8倍とする高濃度区,低濃度区の3水準,摘果処理として,頂果房の着果数11果または7果と1次腋果房以降の全果房の着果数7果または5果のそれぞれ2水準を組み合わせて計12処理区を設けた.低濃度培養液処理区では12月および1月に養分の不足から生育が抑制され果実がやや小さくなったが,培養液濃度間で収量に有意な差は認められなかった.ただし果実の可溶性固形物濃度は高濃度区が他の2処理区より低くなった.低濃度区の養分吸収量は1月下旬までは標準濃度区より少なかったが,2月以降は標準濃度区とほぼ同じであった.従って,供給する培養液の濃度は排液のECが約50 mS・m−1となるように適宜変更することが望ましいと考えられる.摘果処理区間で比較すると,総収量は,着果数の多い頂果房11果―腋果房7果区が最も多く,平均果実重は着果数の少ない7果―5果区が最も大きくなった.頂果房の着果負担が大きいと1~2次腋果房の果実が小さくなったことから,平均果実重の低下には下位の小さな果実の増加だけでなく,前の果房の着果負担による果実の肥大抑制も影響したと考えられる.また,果実の可溶性固形物濃度は,着果数の少ない腋果房5果区が7果区より有意に高くなり,収穫期間を通じた摘果によって果実肥大が促進されると同時に品質が向上することが明らかになった.