園芸学研究
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育種・遺伝資源
蕾受粉および温湯処理によるアジサイ種間雑種の自家不和合性打破
巣山 拓郎谷川 孝弘山田 明日香松野 孝敏國武 利浩佐伯 一直中村 知佐子
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2013 年 12 巻 4 号 p. 343-349

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抄録
H. macrophyllaH. macrophyllaH. serrataの種間雑種には自家不和合性を示す系統があり,八重咲きなど劣性形質を目標とする育種の障壁となっている.そこでH. macrophyllaH. serrataの種間雑種系統‘03NL3’を供試し,異なる開花段階における受粉処理や花序の温湯処理を行い,自家不和合性を打破する手法を検討した.開花2および4日後の両性花の自家受粉を行った後,蛍光顕微鏡を用いて,受粉3日後の花柱内における花粉管伸長を観察した.開花当日受粉区と比較して,開花2日後の受粉では花粉管の伸長促進効果はなかった.開花4日後受粉では花粉管は有意に伸長したものの,胚珠に到達した花粉管は全くなかった.一方,開花前日の蕾受粉では,開花当日受粉区と比較して,花粉管は約2倍伸長し,花粉管の一部は胚珠に到達した.また,花序全体を45℃の温湯に浸漬する処理では,3分または4分間処理において花粉管伸長は促進され,花粉管の一部は胚珠に到達した.‘03NL3’の蕾受粉,花序の温湯処理(45℃,4分間)および蕾受粉と温湯処理(45℃,4分間)の組み合わせ処理により得られた交雑60日後の自殖胚珠を1/2MS培地で培養した.得られた自殖個体を施設内で管理したところ,約半数の個体が交雑2年後に開花した.自殖個体の獲得率は,蕾受粉と温湯処理の組み合わせ処理区で最も高かった.
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© 2013 園芸学会
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