抄録
我が国に自生するブルーベリー近縁種ナツハゼとアラゲナツハゼをブルーベリーの育種へ利用するための基礎的情報を得ることを目的として,果実の成熟特性調査および果実成分の評価を行った.ナツハゼとアラゲナツハゼは,栽培品種と比較して1果房当たりの果実数が多く細長い穂状の果房を着生した.また,同一果房内のすべての果実が成熟するまで樹上に着生させても,最初に成熟した果実は落果しないため,ブドウのように房取り収穫ができる可能性が示唆された.さらに,果実の成熟期は9~11月となり,ブルーベリーの極晩生品種より1~3か月遅いことが明らかとなった.果実の成分を分析した結果,ナツハゼとアラゲナツハゼ成熟果の糖酸比はブルーベリーと比較して低く食味は劣ったが,ナツハゼ成熟果の総アントシアニン含量はブルーベリーの約6倍であった.総アントシアニン含量はすべての材料において成熟果で最も高い値を示した.一方,総ポリフェノール含量,総プロアントシアニジン含量および抗酸化能の変化を調査したところ,ブルーベリーではいずれも未熟果で最も高い値を示し成熟が進むにつれて減少したが,ナツハゼとアラゲナツハゼでは成熟に伴い再び増加した.また,アラゲナツハゼ成熟果の総ポリフェノール含量は栽培品種の約3倍,総プロアントシアニジン含量では約17倍となった.さらに,供試材料で最も高い値を示したアラゲナツハゼの抗酸化能には,プロアントシアニジンを含むポリフェノールが寄与している可能性が示唆された.以上のように,ナツハゼとアラゲナツハゼは,ブルーベリーの収穫期間を拡大し,房取り収穫可能な高い機能性を有する品種育成のための育種素材として有望と考えられた.