抄録
樹体の乾燥ストレスをコントロールするために必要な点滴灌水域を明らかにするため,灌水域の割合が幼木および成木の樹体の乾燥ストレスに及ぼす影響について調査した.その結果,根域に対する灌水域の容積割合と樹体の乾燥ストレスとの間には高い相関関係が認められ,夏秋季の過乾燥を防ぐためには,幼木の場合,根域の約50%以上の灌水域が必要であった.これに対して,成木の場合は,玄武岩質土壌の13年生‘不知火’で根域の19.5%以上(本試験の灌水チューブ4本以上),21年生‘原口早生’で根域の14.2%以上(本試験の灌水チューブ3本以上)の灌水域が目安となることが明らかとなった.チューブは細根密度の高い主幹から100 cm以内に設置し,1回当たりの灌水時間を,乾燥条件下の花崗岩質土壌で20分以内,玄武岩質土壌で20~60分,安山岩質土壌や火山灰土壌においては60分程度とすることで,細根域を効率的に灌水できると考えられた.また,灌水チューブの点滴孔間隔は花崗岩質土壌では20 cm以上,他の3種類の土壌では30 cm以上とすることで無効水を減らすことができると考えられた.