園芸学研究
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栽培管理・作型
中玉トマト‘シンディスィート’の尻腐れ果発生および果実中の水溶性Ca濃度の季節変化と果実肥大速度の関係
大山 光男吉田 裕一Tran Duy Vinh田中 義行安場 健一郎後藤 丹十郎
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2016 年 15 巻 2 号 p. 189-196

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抄録

大玉の普通トマト品種と比較して,尻腐れ果が発生しにくい中玉トマト‘シンディスイート’を用いて栽培季節と低Ca栄養が尻腐れ果発生と果実中の水溶性Ca濃度に及ぼす影響を調査した.春作,秋作ともに園試処方区に比べて低Ca濃度の培養液を施用した,1/4Ca区,1/8Ca区で尻腐れ果発生率が高く,秋作に比べて春作でより高かった.果実先端部の水溶性Ca濃度と尻腐れ果発生率との間で有意な負の相関が認められ,果実先端部の水溶性Ca濃度は秋作に比べて春作では大幅に低かった.果実先端部の水溶性Ca濃度が0.2 μmol・g−1FW以下になると尻腐れ果の発生が急増したが,この値は著者らが大玉トマト‘ハウス桃太郎’を用いて行った以前の実験で得られた値とほぼ同じであった.秋作に比べて気温が高く日射も強い春作では果実の肥大速度が約3倍であった.果実の肥大速度と果実先端部の水溶性Ca濃度との間に有意な負の相関が認められたことから,果実が活発に肥大する条件下では,果実のCa要求が増加すると同時に希釈効果によって果実先端部の水溶性Ca濃度が低下して尻腐れ果発生への感受性が高くなると考えられた.

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