園芸学研究
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収穫後の貯蔵流通
スイートコーンの異なる貯蔵形態が収穫後のしなびの発生に及ぼす影響
柘植 一希大中 創太今井 峻平元木 悟
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2017 年 16 巻 2 号 p. 185-195

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抄録

スイートコーンは,野菜類のなかでも収穫後の品質劣化が早い品目である.品質劣化のうち,子実に凹みや隙間が発生するしなびは,生産から販売までの各現場で問題となっている.また,スイートコーンは,収穫後に苞葉を取り除いた形態や,柄や茎を付けた形態に調製することが可能である.本研究では,スイートコーンのしなびの発生に着目し,しなび評価基準を作成するとともに,3品種を用い,貯蔵形態が貯蔵性に及ぼす影響を明らかにするため,しなび評価,重量減少率および部位別の水分含量の貯蔵形態別の経時変化を温度10°Cおよび湿度70~80%の暗黒条件下で貯蔵し,収穫14日後まで調査した.しなび評価は,いずれの品種も,「むき」が収穫3日後からほかの貯蔵形態に比べて有意に高い点数を示し,「むき」のしなびは,ほかの貯蔵形態に比べて早期に発生することが明らかになった.「むき」の重量減少率は,‘ゴールドラッシュ’ では収穫3日後から, ‘味来390’ では収穫10日後から「慣行」に比べて有意に高い値または傾向を示した.「むき」の子実の水分含量は,いずれの品種も重量減少率とほぼ同じ収穫後日数から,「慣行」に比べて有意に低い値を示した.「むき」の穂全体の水分含量の減少率は,いずれの品種も,「慣行」に比べて高い傾向であったことから,苞葉を取り除くことにより,穂全体の水分が著しく消耗するものと考えられた.播種時期による比較では,いずれの播種時期および品種においても,「むき」はしなびが収穫3日後以内に発生したが,その要因と考える重量減少率および子実の水分含量の影響は,播種時期および品種によって異なった.以上の結果,しなびのおもな要因は,子実からの水分の消耗と考えられるが,今後はさらに品種数を増やし,子実の硬さや呼吸量,炭水化物含量の消長などを調査することにより,しなびの発生に影響を及ぼす要因をさらに詳しく検討する必要がある.

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