園芸学研究
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収穫後の貯蔵流通
焼きいもの食味が異なるサツマイモ6品種の遊離糖およびデンプン含量に対する貯蔵期間の影響ならびにこれら成分値による甘味,肉質の数値化
安藤 利夫家壽多 正樹日坂 弘行
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2018 年 17 巻 4 号 p. 449-457

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抄録

焼きいもの食味特性が異なる青果用サツマイモ6品種を供試し,貯蔵期間が焼きいもの食味に関わる成分変化に及ぼす影響を調査し,併せて成分値による食味の数値化を試みた.貯蔵に伴う焼きいもの甘味の増大には,6品種すべてで貯蔵に伴う3糖,すなわちスクロース,グルコースおよびフルクトースの増加が大きく寄与しており,特に‘クイックスイート’および‘べにはるか’の2品種では,貯蔵に伴う3糖の増加に加え,焼き調理によって生成されるマルトースが大きく寄与した.焼きいもの肉質は焼き調理後に残存するデンプン含量との関係が深く,貯蔵期間による肉質の差は,‘高系14号’のように貯蔵中のデンプンの分解が主要因で生じると考えられる品種と‘クイックスイート’および‘べにはるか’のように貯蔵中のデンプンの分解に加え,焼き調理に伴うデンプン分解の影響を強く受ける品種があることが明らかとなった.焼きいもの成分値を用いて食味の数値化を検討したところ,甘味では各糖含量に甘味比を乗じた値の総和である甘味度が,肉質では乾物からデンプン以外の乾物の影響を除いた乾物中のデンプン含有率が,官能値との相関係数が最も高かった(甘味:r = 0.964**,肉質:r = 0.958**).甘味度および乾物中のデンプン含有率に対する官能値への回帰から,甘味および肉質の成分値による数値化が可能と考えられた.

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