園芸学研究
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作物保護
キク ‘神馬’ の挿し穂の温湯処理後に発生する障害に対する光の作用
原田 陽帆白山 竜次郡山 啓作
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2019 年 18 巻 1 号 p. 59-64

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抄録

キク挿し穂の温湯処理による障害発生要因を解明するため,秋ギク ‘神馬’ を用いて温湯処理後の障害発生と光の作用について検討した.温湯処理をしたキクの挿し穂は,光量が大きくなるほど障害程度が大きくなり,障害発生に光が関与していることが示された.また,温湯処理後,光照射までの暗期の長さを変えて比較したところ,48時間以上暗黒下に挿し穂を置くことで障害が軽減され,温湯処理による光照射の障害から回復できることが示された.さらに,温湯処理後のキクの葉におけるFV/FM測定値から,FV/FM値の低下と,48°C 1分の処理の場合には20°C暗黒条件により72時間後には処理前と同程度にFV/FM値が回復することを確認した.これらのことから,温湯処理直後には光阻害による葉焼けが発生するものの,2~3日間暗黒下に置くことによって光合成能力が回復し,障害発生の回避策として有効であることが示唆された.加えて,温湯へアスコルビン酸を加用した処理により障害の発生が軽減された.このことから,キクの活性酸素消去能力を高めることが障害発生の回避手段として有効であることが示された.

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