2019 年 18 巻 3 号 p. 305-312
低温条件下で酵素剥皮を行うと果実本来の風味や食感を維持した剥皮果肉を加工することができるが,低温条件下での酵素剥皮果肉の物理的性質や機能性成分についての知見が乏しい.そこで,複数のカンキツを対象に低温条件下で酵素剥皮した果肉の硬さや還元型アスコルビン酸とβ-クリプトキサンチンの含量を調査した.また,酵素剥皮果肉をシロップ漬け果肉に加工する際の残存酵素の影響と考えられる果肉の実崩れの抑制方法について検討を行った.酵素剥皮後の果肉の硬さは手剥きの果肉との間に差はみられなかった.また,還元型アスコルビン酸とβ-クリプトキサンチンは無処理のじょうのうと酵素剥皮果肉,酸・アルカリ剥皮の果肉との間に含量の差はみられなかった.従って,酵素剥皮処理を行った果肉は無処理と同様な果肉の硬さが保てるとともに,還元型アスコルビン酸およびβ-クリプトキサンチンの成分含有量の損失は生じないことが明らかとなった.さらに果肉のシロップ漬け瓶詰における残存酵素の影響と考えられる果肉の実崩れの抑制方法を検討したところ,煮沸滅菌の温度とシロップの糖濃度が関与していることが明らかとなり,瓶の煮沸滅菌温度やシロップの糖濃度を一般的な基準よりも高くする必要があることが示唆された.