園芸学研究
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栽培管理・作型
青森県で栽培した西洋系,東洋系および中間型ニンジン品種における香気成分をはじめとする品質および生育の比較
髙橋 啓太前田 智雄池浦 博美倉内 佑Wambraw Daniel Zadrak小山内 祥代本多 和茂
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2020 年 19 巻 4 号 p. 391-398

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抄録

日本で利用されているニンジンは西洋系品種と東洋系品種に大別される.最近,新たにそれらを交配し中間型品種がつくられた.本研究では,これら3品種の寒冷地適性を評価するために青森県での生育状況を調査し,食味に関わる糖,機能性成分としてカロテノイド,そして香気成分を分析し,比較を行った.西洋系品種は ‘オランジェ’,東洋系品種は ‘真紅金時’,中間型品種は ‘京くれない’ を用いた.その結果,地上部の生育は3品種間で差はなかった.一方,根の調査結果から ‘京くれない’ の根が西洋系品種と東洋系品種の中間の形状であることが確認された.糖含量は3品種間で差はなかった.組成に関しては,‘真紅金時’がスクロースが多く,フルクトースが少ない傾向であった.カロテノイド含量は ‘京くれない’ が他2品種より少なかった.組成に関しては,‘オランジェ’ はカロテンが,‘真紅金時’ はリコピンが8割以上を占めるのに対し,‘京くれない’ はほぼ同量ずつ含んでいた.各品種に含まれる香気成分の種類に大きな違いはみられなかったが,含量は異なっていた.ニンジン特有の香りと強く関係しているとされる成分は ‘真紅金時’ に多く,‘京くれない’ に少なかった.‘オランジェ’ には “新緑” と表現され,香りが強いとされるsabineneとp-cymeneが多く含まれていた.以上,ニンジン3品種の寒冷地における生育について確認することができ,その糖およびカロテノイド,含まれる香気成分について知見を深めることができた.

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