抄録
夏季せん定が5年生のオウトウ‘佐藤錦’の花芽形成に及ぼす影響について検討した.
1.4芽残して夏季せん定した場合,せん定時期が早いと,先端芽の葉芽確保は困難であったが,先端芽を除いた芽の花芽形成率は高かった.一方,せん定時期が遅いと,先端芽の確保は容易となったが,先端芽を除いた芽の花芽形成率は低くなった.このため,いずれの時期にせん定しても目的とする良好な結果枝を作ることはできなかった.
2.5芽を残して新しょうをせん定すると,先端芽の葉芽率は5月中旬以降のせん定区で約80%に上昇した.先端芽を除いた芽の花芽形成率は,7月上旬にせん定した区で50%に低下した.6月に夏季せん定すると先端芽および先端芽を除いた芽の花芽を高い割合で確保できた.
3.6芽を残して新しょうをせん定した場合,せん定の時期にかかわらず,先端芽の80%以上が葉芽になり,先端芽を除いた芽では70%以上が花芽となった.
4.5月中旬~6月上旬に新しょうをせん定した区では副しょう発生率が低く抑えられた.
5.翌春の処理枝の枯死率は5月中下旬に20%まで上昇したが,6月上旬には10%に低下した.その後,6月中旬以降の発生は認められなかった.
6.せん定後の新しょうに発生した副しょうでの花芽形成率は5月上旬にせん定した区では40%以上であったが,その後のせん定では急激に低下した.
以上の結果から,オウトウ‘佐藤錦’の若齢樹における夏季せん定は,せん定時期とせん定程度の違いにより翌年の結果枝となる新しょうの花芽形成率に影響を及ぼすことが明らかとなった.6月中に5~6芽残して切ると,せん定処理枝の先端芽が葉芽になる割合が80~100%で,先端芽を除いた芽が花芽になる割合も71~82%と高い割合を確保できた.副しょうの発生は,中旬以降に30%に上昇するものの処理枝の枯死率は低く抑えることができた.6月中に5~6芽残して切るのが翌年の良好な結果枝を確保するために最も実用的な夏季せん定の条件であると考えられた.