アントシアニン色素を多く含み,果実が濃赤色を呈する促成栽培用イチゴ品種 ‘真紅の美鈴’ を育成した.神奈川県における試験栽培において,本品種は ‘とちおとめ’ より花芽分化がやや遅く,定植適期は9月20日頃以降であると考えられた.果実の硬度は ‘とちおとめ’ 並みに高く,糖酸比は20を超え,還元糖のグルコースとフルクトースを比較的多く含んでいた.果実のアントシアニン色素の含量は新鮮重1 g当たり185 μgであり,母親の ‘ふさの香’ および父親の ‘麗紅’ の約2倍,‘とちおとめ’ の約3倍であった.一方,果汁の抗酸化活性には‘真紅の美鈴’と従来品種で大きな差はみられず,アントシアニンの抗酸化活性への寄与度は低いと推定された.アントシアニンの組成はペラルゴニジン配糖体が80%以上を占めており,検出された5成分の構成比は ‘とちおとめ’ や親品種と概ね同等であった.このことから,‘真紅の美鈴’ が濃赤色を呈するのはアントシアニン組成の影響ではなく,色素の含量が顕著に多いためと考えられた.