園芸学研究
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育種・遺伝資源
CAPSマーカーを用いた香酸カンキツの品種識別技術の確立
新見 恵理藤井 浩太田 智岩倉 拓哉遠藤 朋子島田 武彦
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2021 年 20 巻 1 号 p. 17-27

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抄録

香酸カンキツの国内生産量の増加や輸出量の拡大を受けて,香酸カンキツの品種識別技術の確立と新品種の育成者権の保護が求められている.33品種・系統の香酸カンキツについて,生食用カンキツの品種識別に適用した26種類のCAPSマーカーを用いて遺伝子型を調査した結果,形質や産地によって複数の系統に分類されていたユズ(C. junos hort. ex Tanaka),スダチ(C. sudachi hort. ex Shirai),ユコウ(C. yuko hort. ex Tanaka),ジャバラ(C. jabara hort. ex Tanaka)は系統間で遺伝子型がすべて同一であることが示された.また,5種類のCAPSマーカーで生食用カンキツにみられない新規のアレルが検出された.Tf0001/Msp Iを除く25種類のCAPSマーカーの遺伝子型データを用いてMinimalMarkerプログラムで最少マーカーセットを算出したところ,主要な10種類の香酸カンキツを含むカンキツ35品種・系統は6種類のCAPSマーカーで相互に品種・系統を特定できることが明らかとなった.MARCOプログラムを用いて徳島県で育成された三倍体の新品種‘阿波すず香’(C. sudachi(2n = 4x) × C. junos(2n = 2x))の親子関係を鑑定したところ,‘阿波すず香’ が両親のいずれかから受け継いだアレルを有し,親子関係に矛盾がないことが示された.国内で流通する主要な香酸カンキツのDNA品種識別技術の確立により,国産ブランドや育成者権の保護が強化された.

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