2021 年 20 巻 2 号 p. 189-197
岡山県内の新見市(県北部)と岡山市(県南部)で露地栽培したモモ ‘清水白桃’ について2013年~2016年に赤肉果発生率を調査したところ,県南部の発生率は県北部よりも顕著に高かった.県南部においてコンテナで数年間育成した後,県北部へ移動させて栽培したモモ樹と県南部で継続栽培した個体との2016年の比較調査でも同様な傾向がみられた.モモの生育・成熟期間中,いずれの年でも県南部は県北部よりも2°C以上高かった.従って,赤肉果発生は高温環境で促進されることが推察され,特に果実発育第2,3期,とりわけ第3期の高温遭遇頻度が影響している可能性が考えられた.次いで,果実周辺の温度制御を目的として,慣行袋に近赤外および赤外光の反射率の高い酸化チタンを塗布した機能性果実袋を試作した.この機能性袋のモモ果実への被袋が,成熟前の果実温度を約1.5°C低下させ,赤肉果発生を抑制した.一方,機能性果実袋は果実重や外観,糖度,pHなどの品質要素および収穫時期ならびに作業労力や導入費用には大きな負担を与えるものではなかった.この機能性果実袋は簡易かつ安価な赤肉症抑制に対する実用的技術となり得ることが示された.