園芸学研究
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育種・遺伝資源
スノキ属在来野生種ナガボナツハゼのin vitroシュートへのコルヒチンおよびオリザリン処理による倍加個体の作出とその特性
八幡 昌紀勝見 樹香取 千文橋本 望古田 真子周藤 美希富永 晃好向井 啓雄安田 喜一國武 久登
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2022 年 21 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

我が国自生のスノキ属で絶滅危惧種IA類に指定されているナガボナツハゼをブルーベリーの育種素材として利用するために,ナガボナツハゼの多芽体由来シュートを有糸分裂阻害剤であるコルヒチンとオリザリンに浸漬処理し,染色体倍加個体である四倍体の作出を試みた.さらに,これらの処理で得られた四倍体の形態調査を行った.コルヒチン処理では両系統ともに処理時間の延長に伴いシュートの生存率が低下する傾向がみられた.それに対し,オリザリン処理の生存率は系統で異なり,M3では処理濃度の増加と処理時間の延長に関わらず90.0%以上の高い値を示したが,M15では処理時間の延長とともに生存率が低くなる傾向が認められた.処理後新たに発生したシュートの倍数性を解析した結果,四倍体以外に,二倍体と四倍体および四倍体と八倍体の細胞を持つ倍数性キメラが得られた.コルヒチン処理における四倍体の誘導は,M3では9処理区中3処理区で,M15では1処理区のみであった.一方,オリザリン処理では,両系統ともコルヒチン処理より多くの処理区で四倍体が得られ,特に,0.005%・24時間処理を行った場合,最も高い四倍体の誘導率を示した(10.0%).なお,得られた四倍体は,葉や花,花粉が大きくなるといった倍加特有の形態的特徴を有し,アセトカーミンで染色される花粉を生産した.

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