園芸学研究
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栽培管理・作型
環境制御下のキュウリの短期栽培における収量に対する気象要素の影響
東出 忠桐小田 篤安 東赫後藤 一郎藤尾 拓也鵜生川 雅己椙山 幹司山﨑 浩実
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2022 年 21 巻 1 号 p. 17-25

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抄録

我が国のキュウリの収量向上のために,環境制御下におけるキュウリの収量に対する気象要素の影響について調査した.温度のみ制御する慣行区と,これに加えて細霧システムやCO2濃度を制御する制御区を設け,それぞれの環境で同一品種を栽培した.1作3~5か月の短期栽培を3年間にわたって6回の実験を行い,各気象要素の収量増加に対する影響を解析した.温度管理については,すべての実験で慣行区と制御区で同様な制御設定としたところ,実験によって日最低気温および日平均気温に処理区間で有意な違いがみられる場合とみられない場合があった.相対湿度は,慣行区よりも制御区で有意に高い場合が多く,昼間の飽差は慣行区よりも制御区で小さい場合が多かった.冬季に行った3回の実験では,CO2濃度は慣行区よりも制御区で有意に高かった.収量についてみると,冬季3回の実験および夏季1回の実験においては慣行区よりも制御区で有意に多かったが,夏季の2回の実験では有意な差はみられなかった.制御区で収量が多かった場合には,各品種の収量は概ね一様に増加しており,環境制御が収量に対して品種特異的に影響を及ぼす例は確認されなかった.収量と室内の平均日積算日射との間には強い相関がみられ,室内日射が最も収量に影響を与えている要素であることが示された.平均日積算日射当たりの収量(収量/日射)と昼間のCO2濃度との間には強い正の相関がみられた.これよりCO2濃度の制御によって,慣行区より制御区で収量が多くなったと考えられた.一方,収量/日射と相対湿度および飽差との間には有意な相関はみられず,キュウリの収量に対する湿度制御の直接的効果は確認できなかった.

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