2024 年 23 巻 1 号 p. 7-20
パプリカ(Capsicum annuum)は,栽培期間中に着果率が大きい時期と小さい時期を繰り返す特性を持ち,着果率の増減に伴う収量の増減(フラッシュ)が発生する.フラッシュの発生には総乾物生産量と着果負担の多少,つまり両者のバランスが大きな影響を及ぼすことが確認されており,両者の比率であるソース・シンク比を用いることでフラッシュの発生を精度よく説明することができる.そこで,本試験では,1果重が異なる4種類のパプリカ品種(‘Artega’,‘Nagano’,‘Nesbitt’,‘Trirosso’)を対象として,250日間の長期養液栽培を実施し,ソース・シンク比と着果率および収量との間の関連を分析した.中~大果系品種は小果系品種に比べて着果率とソース・シンク比の変動が大きかった.そして,1果重の違いに起因する着果負担の多少が,振幅の大きさに影響を与えていると考えられた.また,開花後1週間のソース・シンク比と着果率との間の回帰曲線は統計的に有意であり(P < 0.001),品種ごとに異なる傾向を示した.以上から,1果重が異なるパプリカ品種では,品種ごとのソース・シンク比を求めることで,着果率や収量の変動の予察および制御を実現できる可能性が示唆された.