園芸学研究
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栽培管理・作型
イチゴのトレイ苗への3日間の冷蔵処理が促成栽培での頂花房の出蕾開花時期に及ぼす影響
矢野 孝喜山中 良祐遠藤(飛川) みのり米田 有希吉越 恆後藤 丹十郎吉田 裕一安場 健一郎
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2024 年 23 巻 4 号 p. 271-278

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抄録

気候変動による8月下旬~9月下旬の高温化によって自然条件下でのイチゴ苗の花芽分化が遅延し,促成栽培の早期収量が不安定化することが想定される.早期収量の安定化を図るため,空いた果実用予冷庫を活用し育苗が省力的なトレイ苗を用いて,苗に3日間の冷蔵処理(13~15°C,暗黒)を行う簡易な花芽分化誘導処理方法を検討した.まず,利用する苗の採苗時の展開葉数について検討し,‘女峰’では採苗時の展開葉数が多い苗(3,4枚)では花芽分化誘導効果が得られ,展開葉数が少ない苗(1,2枚)でも冷蔵処理を行うことで,無処理の展開葉数が多い苗の開花時期と同等となり開花が遅れることはなかった.花芽分化特性の異なる3品種について冷蔵処理による花芽分化誘導効果を検討し,年次変動があるもののいずれの品種においても無処理に対して出蕾時期が早まる効果が得られることから,花芽分化誘導効果があるものと考えられた.3日間の冷蔵処理の開始時期が出蕾に及ぼす影響について検討した結果,品種によって花芽分化誘導効果が最も得られる冷蔵開始時期は異なり,各品種の栽培地における自然条件下での花芽分化時期の1週間前頃である可能性が示唆された.以上より,トレイ苗への3日間の冷蔵処理は,早期定植の場合に出蕾・開花の遅延を回避できる可能性のある低コストで簡易な花芽分化誘導方法であると考えられた.

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