抄録
一般家庭でのトマトの加熱調理の実態をふまえ,加工用トマトの加熱調理適性を総合的に評価した.
1.素材が市販の生食用トマトの場合は,ホールトマトの場合に比べ料理の種類が多岐に及んでいた.加熱調理適性としては,加熱後の水気の少なさ(粘稠度)と赤味が重要と考えられた.
2.心止まり性の23品種・系統を対象に,栽培特性,貯蔵特性を比較した結果,疫病の発生が少なく,栽培期間中や貯蔵期間中の腐敗果率が少ない点で‘とよこま’,‘なつのこま’,‘にたきこま’が北日本地域での栽培に適していた.特に‘とよこま’は,多収で一挙収穫率も低く,栽培特性と貯蔵特性において総合的に優れていた.
3.上記3品種のうち,‘なつのこま’と‘にたきこま’は果形が収穫期にかかわらず卵形で,現在一般に流通している生食用品種と区別しやすく,加熱後の粘稠度はいずれの品種も生食用品種より優れていた.加熱後の赤味は‘なつのこま’以外の2品種で生食用品種より強かった.以上の結果から,生食用品種を加熱調理している日本の現状では,これらの品種の導入により,トマトの加熱料理の質の大幅な向上が期待できる.
4.加熱後の粘稠度と果肉部乾物率には負の相関があり,これが今後加熱調理用品種の品種選定や育種素材の選抜のための簡易な評価法として利用できる可能性がある.