抄録
低温貯蔵したカキ‘西条’果実を材料として,熟柿を安定して製造する方法の確立を目指し実験を行った.果実の軟化はヘタ近傍から始まった.この軟化開始は無処理とγ-リノレン酸100 μL,エチレン100 ppm 48時間処理果で,それぞれ23と16,3日後に認められた.いずれの処理においても,果実は軟化開始後3日ですべて完全脱渋し熟柿となった.エチレン処理によりすべての果実は処理後6日で斉一に熟柿となった.エチレン処理は熟柿化に要する期間が最短で最も信頼できる方法と思われた.
エチレン処理により果皮の着色は改善し,果実硬度は処理後直線的に低下した.また,可溶性タンニン含量は処理開始後3日から減少が始まり,6日で完全脱渋した.0℃で2から8週間貯蔵した果実はいずれもエチレン処理開始後6日に熟柿になったが,4週間以上貯蔵した場合には裂果が見られた.