保護者の行う子育てと乳幼児教育者の行う子育ての相違点は,経験と本能によって導かれた子育てか乳幼児教育者としての専門性に導かれた子育てであるかによっている。前者は,自分の子どもに対する子育て理論としてのみ有効性をもつ可能性があるが,後者についてはあらゆる子どもの子育てにおいてある程度の有効性をもたなければならない。一般の教育理論と同様に,乳幼児教育者は子育て理論とそれを適用する子どもの関係を吟味しなければならない。
さらに,乳幼児教育者は単に保護者に代わって「子育て」を行うだけでなく,子育ての過程において保護者の子育て自体を支援・指導できなければならない。乳幼児教育者は子どもの状態に応じた子育てを常に行わなければならない。ここに,乳幼児教育者の専門性が成立してくる。このような事態において,教育指導者がいかなる方法をとるかはその教育指導者の専門性と経験によって異なる。
そこで,乳幼児教育者がもたなければならない専門性を成立させる要素と条件を分析し,多面的に検討していきたい。