抄録
自閉スペクトラム症(ASD)児には社会的コミュニケーションの困難がみられる。他者心情の推察を調査した先行研究から、ASD 児は言語的補償による命題的心理化を行うことが明らかになってきた。ASD 児がどのように社会的情報の処理を行っているか検証するためには、まず定型発達(TD)児においても、命題的心理化の方略による心情推察が可能なことが説明される必要がある。本研究ではTD 児51名を対象とし、社会的相互作用が描かれた絵カードから命題的心理化を促す文脈分析課題を用いて、心情推察の正答率やナラティブを調査した。その結果、事実の読み取りは十分に可能であったものの、心情推察の正答率にはばらつきがあった。ナラティブにおいては、感情と関連させて因果関係を説明する記述が最も多くみられた。TD 児・ASD 児が行う命題的心理化がどのような機序によるものかは、本研究の結果を基礎にしながら、今後の具体的な介入によって比較検討される必要がある。