日本保健福祉学会誌
Online ISSN : 2424-0036
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老人保健福祉計画における市町村の対応
山本 隆杉本 敏夫香川 幸次郎栗田 修司高戸 仁郎
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1994 年 1 巻 1 号 p. 48-56

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抄録

岡山県立大学保健福祉総合研究所では、現在の保健福祉行政の最大のテーマである老人保健福祉計画の策定に焦点を当てて、O県下の各市町村の取り組み状況を把握し、計画実施後の中間年のローリングに向けて計画の策定過程における課題や問題点を把握、整理することを狙いとして、実態調査(県下全78市町村)を行った。調査結果から、市町村行政の福祉現場では、計画策定の時間、職員体制、ノウハウ等々がなく、やむなくコンサルタント会社に委託したり、相当量の保健福祉サービスの計上に戸惑うなど、自治体担当者の苦悩が浮き彫りにされた。それでも、市町村がサービスの整備計画を行うという経験をもち、少なくとも保健福祉担当者をはじめとして行政職員の意識に変化が起こり始めている。市町村行政が保健福祉のプランニングとマネージメントに向けて、地域住民の生活実態やニーズ把握を行うという実績を積んだことは貴重であり、今後、住民の切実な要求に対してきめ細かな保健福祉サービスの供給が行われるという期待が調査の中で感じられた。老人保健福祉計画が市町村行政に問いかけたものは、行政計画に対する地方自治体の総合的な政策立案能力や調整能力、行政サービスの継続性、専門職員の学習・育成過程であった。同時に、高齢社会対策、農村の過疎問題、地方財政の問題等への取り組み姿勢も問われたと言える。今後、全庁的取り組み、ニーズの測定、住民参加と広報、適切な情報提供と総合相談窓口の設置、財源の保障、専門職員の増員とマネージメント体制の確立等の課題が克服されねばならない。平成7〜8年の計画見直し時に、専門知識と技術を有するスタッフ中心の全庁的な取り組みの下で、住民参加に支えられた計画の執行が期待される。

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© 1994 日本保健福祉学会
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