抄録
本研究は寝たきり老人をもつ世帯のうち特に今後増加が予想される高齢者夫婦世帯に注目して、介護者(配偶者)個人の介護負担を点数化することを主な目的とした。そのため調査員の聞き取りによって、日本産業衛生学会産業疲労研究会が作成した「自覚症状しらべ」を用いてI、II、III群別に介護者の疲労訴え項目数を調査し、林の数量化I類を用いてその疲労訴え項目数と介護者の肉体的・精神的・経済的状態および介助の内容などとの係わりを分析した。また、T-SCOREを用いて簡便に個人の疲労訴え項目数を点数化した。その結果を以下に示す。(1)訴え項目数の増加に影響する主な項目は、I群では職業(有)、健康状態(病気がち)、介護期間(3〜7年未満)、排泄介助(有)、介護時間(随時)などであった。また、II群では訴え項目数の増加に影響する主なカテゴリーは、寝返り介助(有)、継続の意志(限界)、経済状態(困っている)、職業(有)、睡眠時間(6時間未満)などであり、III群では職業(有)、継続の意志(限界)、健康状態(病気がち)、介護期間(3〜7年未満)、体を起こす介肋(有)などであることがわかった。(2)また、群別の数量化モデルによる予測訴え項目数をT-SCOREによって点数化したところ、どの群において基準値である50点周辺に多くが集中したものの、大きな幅もみられた。以上の結果は、介後者の肉体的・精神的・経済的項目および介肋内容のカテゴリースコアから介護者の予測訴え項目数を算出し、更に、その予測訴え項目数に対応するT-SCOREを求めれば、その介護者個人の介護負担の測定が可能であることを示唆するものと考える。