抄録
本稿では保健福祉の総合的な情報化の推進とモデル構築のため考慮されるべき主要事項について、その基本的な考え方を整理する中から、新たなシステムの提言を行った。いわゆる情報福祉社会の実現において、そのシステムの利用者が自身の立場を反映させつつ、情報を容易に活用することが基本的な理念と考えられる。特に、システム主体ではなく利用者主体であること、多様な利用者を前提とすること、情報のそのものに対する活用能力の格差を少なくすること等が求められるものである。高度な情報の利用を保健・医療・福祉のサービスに組み込む際には、情報の共通利用性、再現性や安全性などの確保を踏まえつつ、1)サービス利用の向上、2)サービス提供の効率化、3)サービス内容の高度化、4)個人のニーズヘの対応の四つの視点が考慮されるべきといえる。そこで、保健福祉情報支援の基盤構築にあたり、社会資源をシステム化するため、情報技術における多様化したインターフェースを整理し、包括的な概念モデルを作成した。これにより優先すべき重要インターフェースを整理し、保健福祉における情報支援技術に関する課題点を見出した。さらに、厚生省、通商産業省ならびに自治省などで進められている保健・医療・福祉に関する情報政策を把握し、特にICカードシステムに焦点をあて課題を整理しつつ、健康情報の指標化による健康への動機付け、啓蒙や行動変容を目的とした新しいシステムを提案するものである。