抄録
保健福祉の対象者は心身の機能に何らかの能力障害を有しているために、適切な支援がなければ日常生活や社会生活に著しい制限・制約を受ける。能力障害の範囲は多様で広範であり、また能力障害から派生する様々な社会的不利が心理的な変調をもたらしている場合も少なくない。この様な個々の複雑な障害特性を分析・把握するために、知覚・認知と行動発現の関連を探求する行動科学的考え方と手法が貢献しうる可能性について述べる。現在の行動科学は非常に多数の学問領域から構成される学際的科学であるが、そこから関連する要素を取り出して保健福祉に必要な部分を統合し、対象者の評価や評価研究に反映させ得る可能性は少なくないと考えられる。