糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
原著
1日2回のインスリン治療時における朝と夕のインスリン必要量に及ぼす加齢の影響
宇佐美 勝井田 健一佐久間 智子清水 祐介小松 隆之児玉 光顕吉崎 祐子池田 正毅
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 50 巻 11 号 p. 777-784

詳細
抄録

高齢糖尿病者のインスリン治療の特徴を調べる目的で,朝夕2回のインスリン注射で治療中の2型糖尿病者を年齢別に観察した.1日のインスリン必要量は年齢による差を認めないが,朝のインスリン量は年齢が高いほど多くなり,逆に夕のインスリン量は減少する傾向にあった.そこで,1日のインスリン必要量に対する朝のインスリン量の比率を算出すると高齢者では明らかに高値を示し,夕の比率は低値を示した.次に,これらの変化が腎機能,インスリンの分泌能や代謝と関連するか否かについて調べた.全症例を年齢別に分類し,さらに腎機能の程度により分類して,1日のインスリン必要量に対する朝の必要量の比率を比較したが,明らかな関係はなかった.尿中CPR排泄量は加齢とともに漸減したが,血中CPR反応は年齢による差を認めなかった.次に,インスリン治療時の血中インスリンの変動を調べると,高齢者では一日を通じて高値を示し,インスリン代謝の遅延が示唆された.以上の成績は,高齢者では朝のインスリン必要量に比較して夕のインスリン量が少なくても良好な血糖コントロールが得られることを示しており,壮年者と同じ比率で夕のインスリン量が決定された場合には夜間低血糖の危険性が増大すると考えられる.

著者関連情報
© 2007 一般社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top