2022 年 9 巻 2 号 p. 81-
本稿の目的は,R&D コンソーシアムのバリューチェーン・ネットワーク構造とパフォーマンスの関係を検討することである。これまでの先行研究では,エゴセントリック・ネットワークと組織学習やパフォーマンスとの関係を取り上げたものが多く,R&D コンソーシアム全体のソシオセントリック・ネットワーク構造とパフォーマンスの関係については十分に検討されてこなかった。これに対して,本稿ではR&D コンソーシアムにおいてどのようなバリューチェーン・ネットワーク構造がより高いパフォーマンスをもたらすのか,NEDO プロジェクトのデータを用いて仮説検証を試みた。具体的には,ノンパラメトリック検定の結果,以下の4 点が示唆された。すなわち,①ネットワーク密度が高い群の方が,低い群よりも,上市率の平均ランクが高かった。②ネットワーク推移性が高い群と低い群の間には上市率の平均ランクに有意差は見られなかった。③ 3 つの中心化傾向がいずれも低い群の方が,高い群よりも,上市率の平均ランクが高かった。④ネットワークが高密度・高推移性かつ3 つの中心化傾向が低い群の方が,低密度・低推移性かつ3 つの中心化傾向が高い群よりも,上市率の平均ランクが高かった。