2018 年 66 巻 3 号 p. 985-991
GargasaṃhitāはGārgīyajyotiṣaとも呼ばれ,長年最も古いjyotiṣaに関するテキストの一つとされてきた.WeberやKernそしてPingreeはこのテキストを紀元前後のものとしている.内容的には,バビロニアやギリシアの,兆を扱ったテキストと関連していると考えられている.最も重要なYugapurāṇaを含むいくつかの章を除いて,このテキストはその重要性にもかかわらず未だ校訂も出版もされていないままである. Tithikarmaguṇaは,このGargasaṃhitāのいくつかのリセンションにおいて認められる一つの章であり,GargaあるいはVṛddhagargaに帰せられている.この章は,ヴェーダ時代のインドにおけるティティ(tithi)儀礼に関する,現存するなかでは最も初期の資料であると考えられる.というのも,この章には15の月齢の日とぞれぞれに対応する神々にとって吉凶となる振る舞いが詳細に記されており,これが基本的な暦と祭事に関する枠組みであると見做すことができるからである.このようなGargaの体系は,VarāhamihiraのBṛhatsaṃhitāにおいても認められるが,これに対するBhaṭṭotpalaによる註の中で,Gargaの文が直接的に引用されており,似通った平行句は,Śārdūlakarṇāvadānaや不空の『宿曜経』にも見受けられる.本論文は,Gargasaṃhitāにおける当該箇所の,現時点では検討されてこなかった写本の資料について,他の関連資料を参考にしながら考察を加えるものである.