2022 年 70 巻 3 号 p. 1087-1090
Haradatta(ca. 1100-1300)作Ujjvalāは唯一現存するĀpastambadharmasūtra註であり,後代の伝統はこれをdharmanibandha(法理論書)と見做している.
既存諸版におけるテクストには遺産相続資格を寡婦に与えるか否かについて相容れない記述が併存しており,それらはいずれもHaradattaの意見として示されていると解釈できる.これらの記述はUjjvalāの成立年代,Haradattaの活動年代を決定するための内部的証拠として利用されてきた.
本論文では,Ujjvalāが知らせる相続論題全体の理路や既存諸版が報告する写本情報などから遺産相続肯定論が比較的後代に挿入された記述であることを示す.それによって従来の年代論が修正される.同時に,その肯定論の記述の一部がHaradattamitākṣarā(Gautamadharmasūtra註; 同一のHaradatta作とされる)に論調を合わせるようにして挿入されたことも示す.この知見は先行研究が文体の相違から予測していたUjjvalāとHaradattamitākṣarāの異著者性に対して,内容的側面から裏付けを行うことに寄与する.