伊那谷自然史論集
Online ISSN : 2424-239X
Print ISSN : 1345-3483
木曽山脈天龍川流域の山地渓畔林の分布, 種組成と立地
深町 篤子星野 義延
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2013 年 14 巻 p. 41-51

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抄録

分布情報や種組成などの報告のほとんどない木曽山脈天龍川流域の山地渓畔林において, 生態学的な基礎的知見の蓄積を目的に調査を行った. 天龍川支流のうち,北は小沢川から南は黒川まで11河川を踏査し, このうちの5河川においてサワグルミやシオジが優占する14林分の渓畔林で植生調査を行い,種組成を明らかにした. 与田切川にはまとまった渓畔林の広がりが確認できたが, それ以外の支流で確認した渓畔林はいずれも小規模な林分であった. 調査林分の階層は4層からなることが多く, 高木層にはサワグルミ, シオジ, トチノキ, カツラが,亜高木層や低木層にはアサノハカエデなどのカエデ類が, 草本層には大型シダ植物やミヤマタニソバやウワバミソウなどの小型草本がよく出現した. 構成種のうち常在度が高かった種は, オシダ, イトマキイタヤ, イワシロイノデ, ニワトコであった. 種組成に基づいて調査地の渓畔林の植物社会学的な位置づけについて検討した結果, 調査地北部の小黒川ではヤマタイミンガサ-サワグルミ群集に, それ以外の支流にはシオジ-ミヤマクマワラビ群集に同定される林分の分布が認められた. 現時点では植食性動物の過剰な採食による林床植生の著しい変質はみられなかった.

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© 2013 飯田市美術博物館
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