抄録
英国政府は、国家サイバーセキュリティ・プログラムを創設した。それによって、多額の予算が確保され、新しい組織が設置され、包括的な戦略が公表されることになった。その背景には、セキュリティの意味が拡大し、幅広い問題を包み込むと同時に、戦略的思考の正当化が「脅威」のロジックから「リスク」のロジックへとシフトしていることがある。本稿では、英国がサイバーセキュリティ戦略においてこれまでにとってきた道のりを検証し、制度的な視点から組織の問題を検討する。英国のサイバーセキュリティに関する認識変化は、三つの期間に分けることができる。そうした認識の変化の結果、セキュリティの意味が広がり、「脅威」よりも「リスク」が好まれるようになり、リスクのロジックを正当化するために新しい組織と慣行が生まれてきたことを論じる。