抄録
本論では、シャボン玉を用いたインタラクティブアートとして制作された《都市のすきま》、《風の音楽》、《On the Wind》の3つの作品を紹介し、環境と人を結ぶアートとしてシャボン玉を用いた作品事例とその制作手法について述べる。《都市のすきま》、《風の音楽》、《On the Wind》の3つの作品は主にコンピュータによって制御されている。また、これらの作品はセンサやインタフェースによって作品と鑑賞者の間に双方向性の関係を持つ作品であり、鑑賞者が作品に参加することで初めて作品が成立する。《都市のすきま》は、都市の公共空間においてシャボン玉を発生させることにより、都市の日常にシャボン玉がつくり出す時間の流れを導入することを試みた作品である。《風の音楽》では、シャボン玉が銅パイプにあたることによって音を奏でる作品で、シャボン玉の儚さを視覚だけではなく聴覚によっても表現した。そして、《On the Wind》は、《風の音楽》の形態を発展させることで、シャボン玉が風に乗って音を奏でるインスタレーションとして空間構成を行った作品である。本論は、鑑賞者が作品に働きかけることのできるインタラクティブアートに、風といった環境要素を作品の一部として取り入れることにより、環境と人をひとつの作品として結ぶアート表現を目指した制作研究の報告である。