電氣學會雜誌
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音響濾波器の研究
其一,一般の理論
小林 勝一郎
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1931 年 51 巻 513 号 p. 199-202

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抄録

音響濾波器の實際の形は種々雜多である。同一傳達特性をもつものすら種々に考へられる。その依つて來る所以を明かにし度いといふ希望と,その理論的取扱ひが從來一般的でも統一的でもないのみならず不充分の憾みがある故,この缺陷を除去せんとするのが本論の主旨である。そこで,ここに一つの音響構造(或は音響傳達系)についてこれを嚴密なる理論を以て取扱ひ,その双曲線變數より,これが一般に,ある一つの條件の下に,一つのT乃至π型の導線網に歸し得べきを示し,その直列系と並列系の意義を明にした。特に直列系としては,膜板等の機械要素のなき限り,常に慣性的或は電氣的に謂つて誘導的なる單一的のものなること,並に,從つてこれらの膜板等の導入は,この直列系の單一性を打破して,音響濾波器實現の範圍を擴大するものなることを指摘した。尚ここに注意すべきは,(1)その隣接系の特性によつてその働作を如何樣にも變ずる所謂主管が,それ自身にて定まる二つの定數を以て取扱ひ得ることを示したこと,及び(2)ここに論じた音響系が一般的であつて,これより各種の濾波器の構造が容易に而も自然に導き得るものである故,濾波器に關する了解を一層明瞭確實ならしめると同時に,その設計に當つて直列系及並列系を單獨に考へ得る利便を得たこと,(3)上記T乃至π型導線網に歸すための條件は,實際寸法決定に當り一つの規準を與ふるもの等の點である。尚本論と同樣の問題について昨年四月W. P.Mason氏の論文があるが,(9)これに比して本文の歸結の一つである等價導線網は一般的な場合を取扱ひ,而も,その一層簡單なる形をもつてゐる。

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