電氣學會雜誌
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地球の電界と磁界に對する假説の試み
町原 〓
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1933 年 53 巻 536 号 p. 170-181

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抄録

大氣中に於ては電氣現象が盛に發生す。而して觀測の結果は100V/mの程度に於て靜電電位傾度(Potential gradient)の存在することが知られたり。換言すれば地球表面外の空間は靜電電界なり。此の電界内に於ける種々の物理的現象例へば位置の變化,温度の變化,蒸發等は電氣現象を伴生せしむるものゝ如し。此の電位傾度の生ずる源は何處に存するか,或は電界其のものの中に起る物理的變化より起るものなるか,或は地下若くは高き上層に電荷の存する爲に起るものなるか未だ明かならずと雖も,恐くは地下に強大なる電荷が存在して,之が主源となり,之よう生じたる主電界に更に高層圏に於ける電荷,其の他の副源よりの磁界が複合するものなりと考ふるは最も合理的ならん。斯くして吾人の棲息する地表に於ける空間は一の大なる蓄電器の内部を構成するものとなるべく,此處に於ける種々の電氣現象は蓄電器のDielectric内の局部に於ける放電,充電等の現象に過ぎるざことなるべし。
地球表面外には磁界が存在す。(1)此の磁界は二部に分つを得べし。一部は周期的變化をなすものにして,1日,261/3日,1年,19年等天文現象の周期に應ずるなり。他の一部は大部分をなすものにして,變化無きものなり。之れ亦精確に言へば極めて徐々に,且不整に變化するものなり。
Gaussは地球の磁界はPotentialにて表はし得べきことを創唱し,當時手に入りたる觀測に基きて之を算出せり。此の計算は其の後Neumeyer其の他數家によりて成されたこり。Neumeyerの計算によれば
Ω/α=0.3224cosγ
となるなり。此處にαは地球の半徑,γは觀測點(l,λ)が北緯78λ20',西經67λ11'なる點(磁極)との間の角距離なり。之を見れば地球の回轉軸と磁極とは甚近くして只約12λの角差あるのみなることを知るなり。此の第一近似は即ち不變部分の第一近似なり。
Gaussは地球磁界の源が何なるかに就ては言ふ所なく,單に地表下に永久磁石が分布存在すると考ふることにより説明し得べしとせるのみなるも,更に,之に代ふるに地下に電流が存在すと考ふる亦可なることを指摘せり。Gauss以後にも別に合理的なる假説は未だ完成せられず。
之に反して周期的磁界に就ては却つて研究は進み,特に一日周期のものをStewart, Schuster, Chapmanによりて假説及び計算を完成せられたり。之によれば此の磁界は地球の回轉により起るものにして,地球の磁軸と回轉軸と一致せざる爲め,回轉磁界を生ず。是が空氣外の高處に在る導電性層圏に作用して渦疏を生じ。地球面に對して周期的磁界を生ず。而して此の磁束は更に地下の導電性體に作用して,二次渦流を起して磁界を生ずるを以つて,兩者は合成して,地表面に周期的磁界を現はすと言ふなり。
地球表面外に存在する電界と磁界との源は,或は,個々獨立にして相互の間に何等關係なきものにして,此の二界が先づ存在するが爲めに,更に種々の物理的原因及び二界の相互の干渉等の爲め,種々多樣の電氣的,磁氣的,或は電磁的現象を發生するものなるか,或は兩界共に同一の源より發生し,從つて副生する電界,磁界或は電磁界も同源より間接的に出ずるものなる可未だ明かならず。
今筆者が此處に試みんとする假説は此の二界は共に同一の源より發生するものなりとするものなり。若し此の假説が充分合理的にして矛盾杆格を見出さず,且總ての説明を簡單にするを得ば必ずしも虚想に非ずして,將來更に數歩を進むるに至らん。以下其の要領を掲げんに
(1) 今帶電球が回轉するときは,其の外圍に磁界を生ず。此の磁界は回轉軸を磁軸とする球體永久磁石と同一なり。然るに地磁氣の不變部分の第一近似も亦球體永久磁石の磁舞と同一なり。故に地球が帶電體なることを假定し得るならば,地磁氣の不變部分は地球の回轉にて説明し得べし。
(2) 假に前項の假定を正しとして,電界の強さより算出したる電荷量と,磁界の強さより算出したる電荷量が同一なりやと言ふに,今地球全體を導電體と考ふれば電荷は表面にのみ留るべし。故に均等表面電荷を爲すとして磁界より算出したるものは電界より算出したるものゝ約1.9×108倍となり,殆んど比較にならず,只何れも負なることのみ一致す。此の驚く可き不一致は遂に全然假説を飜すべきかと言ふに,更に考を改めて,表面に近く負電荷あり,中心に近く正電荷ありとし。兩者殆んど同量にして,負電荷が甚小量丈け多しとすれば,靜電界は此の差即ち甚小なる負電荷より起るも,磁界は表面に近き負電荷より起る強き磁界と,中心に近き正電荷より起る弱き磁界との合成界なるを以つて,充分強きものを得べし。故に適當に正負の量が按排さるれば,兩界は併立し得るなり。

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